【産業医が解説】出勤しない働き方「テレワーク」が健康に及ぼす影響とは?

感染症対策としてテレワークを導入する企業が急に増えてきました。
 
出勤をしない働き方は健康面ではどのような影響が考えられるのか、また気を付けないといけないことは何かを産業医として業務にあたっている、産業医事務所合同会社ケンワークの代表 津田健司(つだ けんじ)医師にお話しを伺いました。

 

テレワークで職場環境を自分で整え生産性がアップ!

職場環境は健康に様々な影響を与えます。
 
職場の空調の暑すぎる、寒すぎる問題はどこの職場でも起こりますし、人口密度が高いと、二酸化炭素濃度が高くなり、息苦しさが増します。
 
雑談が多い同僚の話し声が気になったり、近くの席の嫌な上司からいつも監視されているようだ、といった話も聞きます。
 
人がある程度の人数集まると、どうしても様々な問題が起きてしまいます。
 
テレワークは、そういう煩わしさから逃れられるという点で、多くの人から支持されているのだと思います。

 

時間の有効活用になりパフォーマンスも上がる

テレワークのメリットは色々と研究されてきていますが、第一には、通勤による疲労が避けられ、時間の有効活用ができることです。
 
また、仕事のパフォ−マンスや生産性もあがると言われていますし、家族との時間も増やすことができます。
 
特に、風邪やインフルエンザなどの時には、職場内でのうつしあいを防ぐために、有給休暇の取得やテレワークの併用が推奨されます。
 
今回の新型コロナウイルス感染症のように、無症状の人にも感染力がある可能性がある時には、テレワークは非常に有効だと思います。

 

働く意欲は逆に増える!13%も稼働が増える実験結果も


テレワークができるようになると、キチンと労働状況を把握できないので、サボる人が増えるのではないか、と考える管理職の人もいるかと思います。
 
実は真逆で、働く時間が増えたという報告があります
 
例えば2017-2018年に米国で行われた調査では、風邪を引いたはじめの3日間に全く働かなかった人の割合が、テレワークをしていない人では41%でしたが、テレワークをしていた人では28%で、テレワークをしている人は合計半日弱程度長く働いていました

 

対面しないことのデメリット

コミュニケーションの取りづらさや区切りのつけ方の難しさ

一方で、テレワークのデメリットも知られています。
 
例えば、同僚と物理的に離れることで、気軽な質問ができなくなり、知識の共有がされにくくなってしまいます。
 
クリエイティブな企業では、イノベーション創発のために、従業員の気軽な会話を促進するよう努力していますが、このような機会も失われます。
 
また、仕事と家庭の境界線が曖昧になりやすいので、そこは自ら区切りをつける必要がありますし、小さな子どもがいたり、自宅で介護をしている場合には、仕事に集中できないということも考えられます。

 

現場業務が多い、または独立して稼働できないと難しい

テレワークが向いている仕事、向いていない仕事があるのは、なんとなくご想像できるかと思います。
 
一人で完結できる部分が多い仕事、例えばプログラミングなどのIT系ではしやすいでしょうし、逆に現場監督などそこにいることが重要な仕事、綿密な調整が必要な仕事には向いていません
 
同様に、テレワークが向いている人、向いていない人もいます。テレワークは仕事のスケジュールを自分で決め、それに向けて自ら努力できる、自律性の高い人の方が向いています。自分で決めていくのが苦手な人には向いていません。
 
また、新卒や転職直後など、繰り返し情報共有が必要な場合も向いていないでしょう。
 
ですので、一律全員テレワークがよいとも限らないと思います。

 

「テレワークの孤独」にさせず、不調に気が付く仕組みづくりが重要

テレワークになると、うつ病などメンタルヘルス不調の発見が遅くなるのではないかという心配もあります。
 
メンタルヘルスケアで大事な4つのケアの中に、ラインケアというものがあり、上長が「いつもと違う」部下に早く気づくことが重要だとされています。
 
しかし、チャットやメールの業務連絡からは、本人の感情や息遣いは聞こえて来ません。
 
表情や話し方、顔色、身だしなみなど、言語化されないノンバーバルな情報がないと、元気かどうか、判断に困ることもありそうです。
 
これに対しては、例えば、社員全員がリモートワークをしているIT企業の中には、会社独自の“ビデオチャットに出社する”、という先進的な取り組みを続けているところもあり、この方法は「テレワークの孤独」への一つの答えになる可能性があります

 

感染症対策をきっかけにテレワークのノウハウ蓄積を

今回の新型コロナウイルス感染症を契機に、まずは風邪症状のある社員や、腎臓病や心臓病の持病があって感染症に弱い社員などから、テレワークをはじめて、だんだんとノウハウをためていくのが良いかと思います。

 

医科歯科ドットコム編集コメント

これまでは気が付けていた不調に気が付きづらくなるというデメリットもあるとのことですので、そちらを踏まえて急に進んだテレワークのしっかりした仕組みづくりも急がれますね。
 
また時間も体調も自己管理が重要となってきますので、自分自身がなにか不調かな、と思われた際には、医療機関にも相談して対策を打つなどして、ご自身を守るようにされてください。

 
寄稿日:2020年3月3日
 
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プロフィール

津田 健司(つだ けんじ)医師
 
<略歴>
1984年生まれ/千葉県出身
2003年開成高校卒業
2010年北海道大学医学部卒業/同年より亀田メディカルセンター初期研修医
2012年より同院血液腫瘍内科後期研修医
2013年より帝京大学ちば総合医療センター血液・リウマチ内科後期研修医
2014年より助手
2015年より帝京大学大学院医学研究科第一臨床医学専攻博士課程
2018年博士課程早期修了/博士(医学)
2018年合同会社ケンワーク代表社員
 
<資格>
日本医師会認定産業医
日本血液学会血液専門医
日本内科学会総合内科専門医
日本内科学会認定医
抗加齢医学会抗加齢専門医
 

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