【医師に聞く】新型コロナから発生したデマに学ぶ!振り回されないために医師が見る情報のポイントとは?

新型コロナウイルスによる感染症への不安の高まりとともに、報道が増え、感染症に関する情報を目にしない日はなくなりました。
 
毎日のように増え続ける感染者数など、情報が多すぎて不安になる方も多いのではないでしょうか。
 
今回は情報発信も積極的にされている津田 健司(つだ けんじ)医師に、「どのように情報をみて、選択していくのか」 津田医師ご自身でも重視しているポイントを教えていただきました。
 

 

TwitterなどのSNSやニュースで流れる単発の情報だけでは全体像は見えてこない

 
――今回の新型コロナに関してはトレレットペーパーやティッシュの買占めなど、デマや詐欺といった不安をあおる情報が氾濫していますね。情報の見方について津田先生はどう思われますか?
 
テレビでは連日、「〇〇県で〇〇人の感染が発覚!」という報道がされていますが、この情報だけを追っていても、全体像は見えてこないでしょう。
 
情報の種類を考えてみると、日々のニュースやSNSのタイムラインで流れる情報の多くは、一般的に「フロー型」と言われます
 
フロー型の情報では速報性が重視され、その時の旬のニュースのようなリアルタイム性の高い内容が得られますが、内容は単発です。
 
それに対して、「ストック型」の情報とは、1週間のデータのまとめや、各国の対応のまとめ、年齢別の致死率など、要約してある情報のことです。全体像をつかむためには、このストック型の情報をみることが重要になります。

 

全体像がわかる「ストック型」という情報を探すことが大事

 
例えば「80代の患者1名が死亡した」というニュースはフロー型の情報ですが、「中国の4万5千人のデータによると、40代の致死率は0.4%だが、80代では14.8%だった」はストック型の情報です。
 
ストック型の情報では、データをまとめて分析しているので、情報を読むことで頭の中が整理されます。
 
そのままでは把握しきれない雑多な情報を、いろいろな切り口で再構成して、物事の本質を浮き彫りにしている、とも言えます。

 

誰が発信している情報なのか?

 
そこで重要になるのは「誰」が情報をまとめて分析しているのか?ということです。
 
一般的に信頼できると言えるのは、厚生労働省や感染症研究所、公的医療機関(国立国際医療研究センターなど)のホームページなどです。
 
特に、厚生労働省の「新型コロナウイルスに関するQ&A」や「新型コロナウイルス感染症の現在の状況と厚生労働省の対応について」というページは見やすくまとまっていると思います。
 
他にも、日本語の情報源ではないのでそのままでは読みづらいですが、有名医学誌(NEJM、Lancet、JAMAなど)に掲載された論文、WHOや海外の公的機関(米国CDC(疾病管理予防センター)や中国CDCなど)のレポート、などは信頼性が高いと考えられます。
 
なお、有名医学誌の信頼性が高いと考えられるのは、決して「有名だから」ではありません。
 
「査読(さどく)」といって、データを集めた方法や解析の手法、結果の解釈などが、各分野の一流の研究者によって厳重に吟味をされた上で、公開されているためです。
 
そして、これらの有名医学誌に掲載される論文は世界中の医師・医学研究者が注目しているので、出版後も問題があればすぐに各所から厳しい指摘が飛んできて、読者からのコメントのうち重要なものは、後日掲載されます。

 

複数の媒体を比較して情報を得る


しかしながら、そのまま論文や医学誌をご自身で見ようとなると、英語で読みにくかったり、専門用語がわからなかったり、元文献にあたる時間が取れない方も多いと思います。
 
その場合は、ファクトチェック(事実かどうかの検証と確認)がしっかりとしている媒体を読んだり、複数の媒体から情報を得て比較することが大事です。新聞も各社を比べてみると論調が随分と違うことがわかると思います。
 
この時に、できれば海外からの情報も加えると、よりいろいろな角度から見られると思います。
 
間違っても、名誉教授や元教授というような肩書だけで、信用してはいけません。

 

医科歯科ドットコム編集コメント

これまでのインタビューでも津田医師は、医学誌論文やWHO、厚労省など信頼性の高いデータを基にお話されていました。
 
統計データだけを見て自分で読み解くことはなかなか難しいことかもしれません。専門家や信頼性の高い媒体が発信している複数の情報を比較すると、誤情報に影響されるリスクを減らすことができそうですね。
 
取材日:2020年3月5日
 
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文中言及サイト

新型コロナウイルスに関するQ&A(一般の方向け)
新型コロナウイルス感染症の現在の状況と厚生労働省の対応について(令和2年3月9日版)

 

プロフィール

津田 健司(つだ けんじ)医師
 
<略歴>
1984年生まれ/千葉県出身
2003年開成高校卒業
2010年北海道大学医学部卒業/同年より亀田メディカルセンター初期研修医
2012年より同院血液腫瘍内科後期研修医
2013年より帝京大学ちば総合医療センター血液・リウマチ内科後期研修医
2014年より助手
2015年より帝京大学大学院医学研究科第一臨床医学専攻博士課程
2018年博士課程早期修了/博士(医学)
2018年合同会社ケンワーク代表社員
 
<資格>
日本医師会認定産業医
日本血液学会血液専門医
日本内科学会総合内科専門医
日本内科学会認定医
抗加齢医学会抗加齢専門医
 

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