【耳鼻科医が解説】花粉症には乳酸菌は有効と言えないという大学の実験結果が!漢方はどうなの?

 
ヨーグルトや甜茶、漢方薬など、花粉症に効くと民間で言われているものは様々です。しかし何を信じていいのか判断が難しいところです。
 
今回は、そういった様々な民間の代替療法の有効性について、実験に基づいたお話を「とねり耳鼻いんこう科・アレルギー科」院長 國井 直樹(くにい なおき)医師に伺いました。
 

 

試している人が多い民間療法は漢方薬、乳酸菌、甜茶など

医療機関などで受ける治療以外の治療の治療を代替医療(いわゆる民間療法)と呼びます。アレルギーの病気に対し、どの様な代替医療を受けている方が多いのか、以前いた大学で大規模なアンケート調査を実施したことがあります。

 
その結果、実に色々な治療が試みられていることがわかったのですが、多かった回答として、漢方薬、ヨーグルトなどの乳酸菌、甜茶(てんちゃ)、アロマ療法、鼻腔拡張テープがありました。

 

はっきり効果が認められたのは漢方薬のみ

 
それらの治療ついて本当に効果があるのか、ということは皆さんが興味を持たれるところだと思います。そこで、ボランティアの患者様に協力頂き臨床試験を行いました。
 
まず、漢方薬につきましては我々の試験ではありませんが、以前に行われた試験で、小青竜湯(しょうせいりゅうとう)という漢方薬の有効性が科学的に証明されています。
 
我々が調べた乳酸菌ではスギ花粉症の患者様に対しての有効性は確認できませんでした。また、甜茶についてはダニに対するアレルギー性鼻炎の患者様に対して行った試験で、やはり効果を認めませんでした。アロマ療法と鼻腔拡張テープに関しましても、少数の患者様で行った試験で効果を確認できませんでした。
 
このことから、これらの代替医療には病院でもらう薬のような効果はないと考えています。処方薬の代わりにはなりませんが、人によってはこういった治療法がよく効くと感じる患者様もいらっしゃいますので、処方薬と併用して行って頂くのが良いかと思います。
 
すべての患者さんに効くわけではないということを知っていただいたうえで、ご自身にあった治療法を試していただくとよいでしょう。

 

“小青竜湯(しょうせいりゅうとう)”は鼻水、くしゃみに効果がある

花粉症の症状は、くしゃみや鼻水、眼の痒みといった花粉が入ってきてすぐに起こる症状(即時相といいます)と、鼻づまりの様な比較的長く続く症状(遅発相といいます)の2つに分けられます。
 
前者はおもにヒスタミンという物質が関与し、後者にはロイコトリエンという物質の影響が強いと考えられています。そのため、患者様の症状や鼻の中の状態によって使うべき薬が変わってきます。よく「花粉症に一番効く薬が欲しい」といわれるのですが、患者様ごとに効く薬は違っていて、診察してみないと何が効くのか予想できません。
 
前述した小青竜湯は即時相の症状である鼻水やくしゃみに効果があると考えられています

 

医科歯科ドットコム編集コメント

乳酸菌や甜茶など、人によっては良いと感じることがあるかもしれません。民間療法を否定するわけではありませんが、科学的な試験に基づいて効果が証明されている処方薬に取って代われるものではないでしょう。
 
新型コロナウイルス感染症が流行っている今、くしゃみをするにも気を使わなければなりません。民間療法も良いですが、しっかり病院にかかり、効果が証明されている薬を活用することも検討していただければと思います。

 
取材日:2020年2月13日
 
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プロフィール

とねり耳鼻いんこう科・アレルギー科
院長 國井直樹(くにいなおき)
 
<経歴>
2003年3月  山梨医科大学 卒業
2008年3月  千葉大学大学院博士課程 卒業
2008年4月~ 千葉大学耳鼻咽喉科 助教
2009年4月~ 船橋市立医療センター耳鼻咽喉科 医長
2010年4月~ 米国ペンシルバニア大学に留学
2012年4月~ 帰国後は千葉大学にて耳鼻いんこう科診療や免疫学の研究、学生教育に従事
2019年5月~ とねり耳鼻いんこう科・アレルギー科開院
 
<資格>
医学博士
耳鼻咽喉科学会 耳鼻咽喉科専門医
耳鼻咽喉科専門研修指導医
アレルギー学会認定 アレルギー専門医
がん治療認定医
耳鼻咽喉科学会認定補聴器相談医