【医師が解説】死者1万人越え!米国インフルエンザ増加率は例年通り?

 
コロナウイルスとならんで現在話題になっている、アメリカのインフルエンザの流行。
 
死者が1万人をこえるというショッキングな数字を出していますが、実はアメリカでは例年、膨大な死者数を出しているそうです。
 
現状の解説と、過去に発生した新型インフルエンザについて、津田 健司(つだ けんじ)医師に教えていただきました。
 

 

アメリカで今も流行中のインフルエンザ

 

6万人の死者が出たシーズンに比べ例年通りの増加速度

アメリカでインフルエンザウイルスの流行が問題になっています。
 
最新の統計ですと2200万人が感染して、21万人が入院、1万2千人ほどが亡くなっていると推定されています。
しかし、まだこの数字自体は今までの流行と比べると、取り立ててとても多いというわけではありません。
 
アメリカで最悪のシーズンであったのは2017年から2018年にかけてのシーズンと言われており、この時には80万人が入院し、6万人ほどが死亡したといわれています。
 
今回はその時と比べて感染者数、入院者数ともに増加するスピードは早くありません。現時点でのスピードは例年通りと言える範囲です。
 
ただ死者数が1万人を超えているというのは、絶対値としてはとても多いと思います。

 

ワクチンの型の違いが死者数を大きく左右する

最悪の死者数を出したと言われる2017年のシーズンはワクチンの有効性が40%と低かったと言われています。
 
今年に関してはワクチンの有効性のデータはまだ出ていませんが、少し低い可能性はあります。実際に流行っている型とワクチンで打った型が少し違うということです。

 

今も続く2009年タイプ「新型インフルエンザ

よく言われる新型インフルエンザというのは、2009年の豚インフルエンザから始まったものを指すことが多いかと思います。
 
これは元々、豚の中にあったインフルエンザが、養豚場などからヒトにうつってしまったもので、世界中で大流行して10万人を超える死者がでました。

 

ワクチンもでき、2011年からは「季節性」の一つに

豚インフルエンザ発生の翌年2010年からは、インフルエンザワクチンに新型インフルエンザであったA(H1N1pdm09)というその型も組み込まれるようになりワクチンができました

 
その後は発生時ほどの世界的大流行はなくなりました。
 
当時は新しいウイルスだった為誰も抗体をもっていませんでしたが、今はワクチンもあり、また1度かかったことのある人も増えて抗体を持つようになったためです。
 
そしてこの2009年タイプは最近毎年のように流行しており、今年も同じく流行っています。2011年からは厚生労働省も新型という言い方を止めて、季節性インフルエンザとして扱うと通達を出しています。

 

医科歯科ドットコム編集部コメント

日本でのインフルエンザ死者数が214人(2001年)~3325人(2018年)であるのに比較すると文字通り桁違いでショッキングです。
 
予防接種率もアメリカのほうが高いという話なので、これほど死者数が増える明確な原因は断定できないそうですが、日本とアメリカの異なる点は治療へのアクセスのしやすさでしょうか。
 
毎年流行るインフルエンザですが、甘く見ずにしっかり受診を心がけてください。

 
取材日:2020年2月12日
 
医科歯科.comではクリニックの検索&予約いただけます

プロフィール

津田 健司(つだ けんじ)医師

 
<略歴>​
1984年生まれ/千葉県出身​
2003年開成高校卒業​
2010年北海道大学医学部卒業/同年より亀田メディカルセンター初期研修医​
2012年より同院血液腫瘍内科後期研修医​
2013年より帝京大学ちば総合医療センター血液・リウマチ内科後期研修医​
2014年より助手​
2015年より帝京大学大学院医学研究科第一臨床医学専攻博士課程​
2018年博士課程早期修了/博士(医学)
2018年合同会社ケンワーク代表社員​

 
<資格>​
日本医師会認定産業医​
日本血液学会血液専門医​
日本内科学会総合内科専門医​
日本内科学会認定医​
抗加齢医学会抗加齢専門医
 

<YouTubeにて医学専門知識をわかりやすく解説中♪>
仕事と心の保健室https://www.youtube.com/channel/UCh2EipzKfnwknzyj5ZnvabQ