インフルエンザの予防接種では注射が一般的ですが、鼻にスプレーする「鼻噴霧(はなふんむ)タイプのワクチン」というものがあるそうです。注射が苦手な人には朗報に思えますが、誰にでも使える方法なのでしょうか?
そこで、現役医師でありケンワーク代表の 津田 健司(つだ けんじ)医師 にお話を伺いました。国産の鼻噴霧ワクチンはアメリカ産とどう違うのでしょうか?
鼻にプシュッとするタイプの予防接種とは?
●注射嫌いの小さなお子さんも予防接種が受けやすくなる!?
まだ発売はされていませんが、国産の「鼻噴霧(はなふんむ)タイプのワクチン」が開発されたという報道がでました。
これは不活化タイプのワクチン(感染能力を失わせたウイルス)で、まだ全貌は明らかになっていませんが、臨床試験の段階では、2回ほど鼻にプシュッとすることによってインフルエンザが予防できるというものです。これは早くて2年後くらいに発売される見通しです。
――アメリカではすでに鼻噴霧タイプのワクチンが使われているそうですね
アメリカではすでに鼻噴霧(はなふんむ)タイプのワクチンが承認されています。これは日本のものとは違い、生タイプのワクチン(毒性を弱くした生きたウイルス)になります。
このワクチンは、当初はあまり効かなかった年もあり、出始めたころ(2016-2017、2017-2018シーズン)、アメリカ疾病予防管理センター(CDC)の推奨を取り下げられましたが、その後のシーズン(2018-2019、2019-2020シーズン)では、再度推奨されています。日本でもこのワクチンを輸入をして、使用しているクリニックもあります。
――生タイプの鼻噴霧ワクチンはだれでも使うことができますか?
ただ、アメリカの生タイプの鼻噴霧ワクチンは少し特徴があり、打てる人が限定されるため、医師の確認が必要です。
注射ではないので痛くないですが、基本的には元気で持病のない「2歳から49歳まで」しか、推奨されていません。
例えば、ぜんそくをもっている、またはぜんそくのエピソードが1年以内にあった2-4歳、アスピリンまたはサリチル酸を内服している2-17歳、抗インフルエンザ薬を48時間以内に投与された方、免疫抑制状態の方などは打てません。また、生ワクチンなので、妊娠中の方も使えません。
造血幹細胞移植後など免疫不全の方と接する方は、接種後に少なくとも7日間は接触を避けて下さい。
また、5歳以上の喘息の方、持病のある方(心・肺・肝・腎・代謝疾患など)などは接種が絶対にダメなわけではないものの、注意が必要です。自分が鼻噴霧タイプの予防接種を受けることができるかどうかは、医師に確認して下さい。なお、鼻に噴霧するため、鼻づまりのある方は効果が落ちると言われてます。
「生ワクチン」と「不活化ワクチン」の違いとは?インフルエンザの注射に使われるワクチンはどっち?
風しんや麻しんなどに使われる生ワクチンはウイルスや細菌の毒性を弱くした生きたウイルスが使われ、不活化ワクチンはウイルスや細菌を殺し感染能力を失わせたウイルスが使われています。注射で打つタイプのインフルエンザの予防接種はこの不活化ワクチンです。
生ワクチンの方が免疫力は強いですが、生きたウイルスから免疫を得るため、接種後の女性は2ヶ月避妊が必要ですし、妊娠中の女性には生ワクチンは避けています。
生ワクチンによるその病気の発症の可能性はほとんどないですが、原理上ゼロではありません。ですので、インフルエンザの鼻のワクチンも発症することはまずないと言われていますが、こちらもゼロではないと思います。実際、鼻噴霧ワクチンの副反応として鼻水、鼻詰まり、頭痛、発熱などの風邪症状が見られる場合があります。
――不活化ワクチンであるインフルエンザの予防接種を受けて体調が悪くなるというケースもありますか?
注射を打って腫れる方、腫れない方がいるように、予防接種後にだるくなったり、頭痛や筋肉痛といった副反応が強くでる人がいる可能性はあります。
医科歯科ドットコム編集部コメント
鼻にシュッとするタイプの予防接種があるとは知りませんでした。筆者は毎回、注射で痛い思いをしているので、鼻噴霧ワクチンが日本でも承認されるといいですね。
この予防接種がスタンダードになれば、小さなお子さんのいるご家庭にとっても嬉しいのではないかと思います。
取材日:2020年2月12日
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プロフィール
<略歴>
1984年生まれ/千葉県出身
2003年開成高校卒業
2010年北海道大学医学部卒業/同年より亀田メディカルセンター初期研修医
2012年より同院血液腫瘍内科後期研修医
2013年より帝京大学ちば総合医療センター血液・リウマチ内科後期研修医
2014年より助手
2015年より帝京大学大学院医学研究科第一臨床医学専攻博士課程
2018年博士課程早期修了/博士(医学)
2018年合同会社ケンワーク代表社員
<資格>
日本医師会認定産業医
日本血液学会血液専門医
日本内科学会総合内科専門医
日本内科学会認定医
抗加齢医学会抗加齢専門医
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