【医師が回答】「インフル」致死率を下げるワクチン接種|流行の型と違う場合は?

 
3月まで流行シーズンが続くというインフルエンザですが、予防接種の重要性というのは毎年のように言われることです。
 
そもそも予防接種さえ受けておけば100%感染しないのか?ワクチンがそのとき流行しているウイルスの型と違った場合は…そんな疑問をケンワーク代表である 津田 健司(つだ けんじ)医師に伺います。
 

 

Q:ワクチンを打ったらインフルエンザにかからないのでしょうか?

 
インフルエンザのワクチンの効果は、「発症」を予防すると共に、万が一なってしまった場合の「重症化」を予防することです。発病すると多くの場合は1週間ほどで回復しますが、重症化して入院を必要としたり、死亡する方もいます。
 
――ワクチンの有効性とは結局何でしょうか?
 
よく勘違いされがちですが、ワクチンの有効性が50%というのは、100人中50人がインフルエンザにならないというわけではありません。100人中10人がインフルエンザになっていた所を、ワクチンをうつと5人に減らすことができる。インフルエンザになるリスクを半分にできるということです。
 
つまり、ワクチンを接種したからといって絶対にインフルエンザにならないというものではなく、発症の予防や発症後の重症化、死亡のリスクに対して効果があるものとされています。

 

●ワクチンを打つと致死率が下がる!?

5歳以下の子ども(特に2歳未満の子ども)、妊婦さん、高齢者、ぜんそくのある方、腎臓や肝臓に持病のある方などの重症化するリスクの高い人たちは、より積極的にワクチンを打ったほうがいいといわれています。
 
2013年にはスペインから、ワクチンが75%の発症を防ぎ、60%の入院と89%の重症化を防いだと報告されました。
国内の研究では、福祉施設に入所している65歳以上の高齢者にインフルエンザのワクチンを接種したことで、34~55%の発病を阻止し、82%の死亡を阻止する効果があったとされています※1

 

Q:もし流行っているインフルエンザの型とワクチンの型が違う場合は?

もし型が違う場合は、直接的な有効性は落ちますが、それでも予防接種を受けることは効果があると言われています。
 
過去もワクチンの型を外してきた歴史はありますが、インフルエンザにかかった人を解析するとワクチンを打っている方が重症化する人が少なかったと言われています。

 

●インフルで死亡した子どものうち8割は未接種だった、というデータもある

アメリカでは、2020年はインフルエンザの死者が1万人を超え、コロナウイルスよりも猛威を振るっていますが、2017-2018年シーズンは最悪のインフルエンザ流行の年といわれ、死亡者が約6万人、入院者が約80万人といわれています。
 
その後の解析では、インフルエンザで死亡した子どもの8割が予防接種を受けていなかったというデータが出ています。
 
また、アメリカの科学アカデミー紀要(アメリカの科学アカデミー発行の機関誌)ではたとえ、ワクチンの有効性が20%であってもアメリカの国民の40%が打てば死亡者数は半減するというデータがあります。
 
つまり、ワクチンの有効率が低くてもワクチンを打つことで致死率や入院などの重症率を下げることができる、というのは科学的に証明されています。

 

医科歯科ドットコム編集部コメント

インフルエンザの予防接種は発症を予防し、万が一かかったときにも症状を和らげるためにうけるものということを、津田 健司(つだ けんじ)医師に教えていただきました。
 
日常生活では、インフルエンザが流行している時期は人混みを避けたり、室内の湿度を50~60%に保つなどして予防してみてはいかがでしょうか。

 

<参考>
厚生労働省:インフルエンザQ&A

※1
平成11年度 厚生労働科学研究費補助金 新興・再興感染症研究事業「インフルエンザワクチンの効果に関する研究(主任研究者:神谷齊(国立療養所三重病院))」

 
取材日:2020年2月12日
 

プロフィール

津田 健司(つだ けんじ)医師
 
<略歴>​
1984年生まれ/千葉県出身​
2003年開成高校卒業​
2010年北海道大学医学部卒業/同年より亀田メディカルセンター初期研修医​
2012年より同院血液腫瘍内科後期研修医​
2013年より帝京大学ちば総合医療センター血液・リウマチ内科後期研修医​
2014年より助手​
2015年より帝京大学大学院医学研究科第一臨床医学専攻博士課程​
2018年博士課程早期修了/博士(医学)​
2018年合同会社ケンワーク代表社員​
 
<資格>​
日本医師会認定産業医​
日本血液学会血液専門医​
日本内科学会総合内科専門医​
日本内科学会認定医​
抗加齢医学会抗加齢専門医
 

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