【医師に聞く】ノロウイルス感染「ウイルスの感染力と自分の免疫力との戦い」とは? 2月も注意!

 
――集団感染を起こすこともある「ノロウイルス」について消化器内科の先生に教えてもらいました

 
年齢を問わず、毎年のように感染者が出るという「ノロウイルス」。11月から徐々にピークを迎えて3月までとくに油断できない感染症だと聞きます。
下痢や嘔吐が特徴的だと言われますが、どんなことに注意すればよいのでしょうか?
「わかさクリニック」院長の消化器内科医 間嶋崇 医師にお話を伺います。

 

Q:ノロウイルスの感染力についてどう思われますか?

 
ノロウイルスの感染力は非常に強いですね。家族にノロウイルスにかかった人がでますと、その家族もだいたい感染してしまうことが多いようです。
たとえばお子さんが感染すると、そのお母さんにもお父さんにも感染し、おばあさんまで感染してしまう・・・というように、順番に感染していくというケースが多いですね。

 

Q:どのように感染しますか?

 
ノロウイルスは会話をするだけでも飛沫感染することがありますし、空気感染もします。
嘔吐物からもうつると言いますが、閉め切った部屋などではウイルスが空気中に漂うことで感染しやすくなります。
ですから、ノロウイルスの予防に関してはなかなか難しいというのが現状です。

 

Q:トイレでの感染にも注意!

 
トイレでも感染には気をつけたほうがよいでしょう。下痢をしている人の便からもうつります。それくらい、ノロウイルスはすごい感染力ではあります。
 
厳密には、嘔吐や下痢が治まったとしても、ある程度ウイルスは体内に残っていると考えたほうがいいでしょう。ですが、実際にはそこまで気にすると社会生活もあるでしょうし、難しいですね。
 
予防法といえば、なるべく感染している人と接触しないこと、カキなどの魚介類に気をつけることなど、本当に一般的に言われている予防法しかないでしょう。
どうしてもノロウイルスは、同じ空間にいるだけでもうつってしまいやすいものです。ただし、それが本当のノロウイルスであれば、という話にはなります。というのは、胃腸炎の原因はすべてノロウイルスであるとは限らないからです。

 

Q:ノロウイルスの検査というのは必ずするものでしょうか?

 
ノロウイルスかどうかを調べるためには保険の利かない検査がありますが、検便するという簡易検査になります。
保険に関しては高齢者と乳幼児以外では利かない検査になりますので、一般的にはあまり行われない検査にはなります。食品を扱っている仕事の方や病院の関係者など、環境的な要因がある場合は検査に来られる方もいます。

 

Q:手洗いうがいの他に予防法はありますか?

 
「次亜塩素酸」を使うことが多いですね。アルコール消毒は万全とはいえないかもしれません。

 

Q:ノロウイルスに感染しやすい人とは?

 
やはり感染しやすい人というのは、体力の弱っている人です。疲労によっても体力が弱ります。
結局のところ、手洗いうがいをするしか代表的な予防法がなく、それでもノロウイルスにかかる人が出てしまうということです。

 

Q:どんな症状がありますか?

 
吐き気、下痢、高熱があります。嘔吐や下痢の症状がかなり酷くなることが多いです。
症状は数日で落ち着いても、ウイルスが体からいなくなるまでには相当の時間がかかると言われています。

 

Q:下痢の症状が酷いときはどうすればいいでしょうか?

 
下痢の症状がひどいときには、まず補水といって水を飲んで脱水にならないようにすることが大切です。
下痢がひどい場合は点滴で電解質の水分を補給することもあるくらいです。薬は対症療法となり、お腹の痛み止め、下痢止め、吐き気止めというように、そのようなお薬を処方します。

 

Q:下痢の症状はどれくらいで落ち着きますか?

 
下痢の症状は人によりますね。相当ひどくなる人もいますし、軽い症状ですむ人もいます。風邪のウイルスと同じように、症状の重い人もいれば軽症の人もいるということです。
「ウイルスの感染力と自分の免疫力との戦い」ですね。大きく分類すると、胃腸風邪でありウイルス感染症です。

 

Q:自覚症状がなくても感染している場合はありますか?

 
下痢などの症状がなくても検査をしたら実は感染していた、というケースはもちろんあります。ウイルス感染とはそういうものです。
 
症状が軽く済む人もいます。インフルエンザもそうですね。
全く高熱が出ていなくても、倦怠感があるので検査したらインフルエンザにかかっていたという人もいますよね。

 

インフルエンザ、新型コロナウイルスも。感染症は自覚なしに広まる怖さがある

 
感染は自覚がなくても広まることがあるので、それがウイルス感染の怖いところです。新型コロナウイルスもそうですよね。
新型コロナウイルスを心配されている方は多いですが、現時点ではまず保健所に連絡をして指示をあおいでくださいと国からの通達があります。
仮に症状が疑わしい患者さんが来院した場合は、個室で症状を伺ってから保健所に連絡するというフローをつくっています。

 

Q:冬から3月にかけてノロウイルスの症状で来院する方は実際に多いですか?

 
実際にはノロウイルスの診断名をつけないことが多いです。ウイルスの型まで調べるケースはあまり多くはありません。
胃腸炎の診断は多いです。また、インフルエンザで胃腸炎のような症状が出る人もいます。やはり冬から春先にかけてが多いですね。

 

医科歯科ドットコム編集部コメント

ノロウイルスの感染力は非常に強いため、室内やトイレでの飛沫感染、空気感染には気をつけたほうがよいでしょう。
「嘔吐や下痢の症状が治まったとしても、体内にはまだウイルスが残っていることもあります。」とも間嶋医師はお話されていました。
ウイルスに対する抵抗力をつけるために、疲労を感じたら早めに休息をとるように心がけたいですね。

 
取材日:2020年2月5日
 

プロフィール

間嶋 崇 医師 
わかさクリニック 理事長・院長
<経歴>
1986 北海道札幌南高校卒業
1992 防衛医科大学医学部医学科卒業
1992~2006 防衛医大病院自衛隊中央病院自衛隊富士病院等
1999~2002 防衛医大医学研究科消化器病学専攻
留学:米国 シカゴ大学
2006.1~ わかさクリニック
<所属学会>
日本外科学会
日本消化器外科学会
日本癌治療学会
日本消化器病学会
日本胃癌学会
日本食道学会