【薬剤師に聞く】花粉症の薬も!?ドラッグストアにある医師処方薬と同じ成分「スイッチOTC」を知っていますか?

 
セルフメディケーションという言葉をご存知ですか?
忙しくてクリニックに行く時間がないとき、混み合う待合室を避けたいときなど、とりあえずはお薬だけ買って済ませたいと思うことはないでしょうか。
 
そんなときに知っておくと役に立つ「スイッチOTC」という市販薬と、セルフメディケーションを後押しする制度について、㈱ミナカラの薬剤師である児玉亮二さんに教えていただきました。

 

花粉症のアレグラも対象!「セルフメディケーション税制(医療費控除の特例)」とは?

「セルフメディケーション税制」がなぜ始まったのかといいますと、国として医療費の高騰を抑えたいということがあります。
国民全体の医療費が年々増加しているためです。
 
さらに高齢化社会ということもあり、全員が病院に行ってしまうと医療費が国の財源を圧迫してしまいます。
医療費がどこで発生しているのかというと、病院や薬局で使える健康保険ということになるのですが、一般の方は3割負担で、残りの7割はいわゆる保険から支払いをしています。
なかには、0割負担の方もいて、10割を保険料として負担していることもあります。
 
そこで、“セルフメディケーション”をすればいいのではないか?という考えが出てきました。
つまり、「健康保険に頼らずとも自分で薬を買って、自分で身体を治すことができればいいじゃないか」ということです。

 

対象の購入額が1万2000円以上(世帯/年間)なら所得控除になる!?

実際問題として、病院に行くほうが費用が安く済ませられる、と考えている方もいます。
しかし必ずしもそうではなく、セルフメディケーションの対象となる薬などの商品を購入すると、世帯での年間購入金額によっては税制が優遇されるわけです。
 
※世帯での対象薬品の購入が年間1万2000円以上であり、該当年に医療費控除の利用がなく、健診など健康の為の一定の取り組みをしていると、購入費用について所得控除を受けられることがあります。

<参考>セルフメディケーション税制(特定の医薬品購入額の所得控除制度)について

 

薬局やドラッグストアの登録販売者制度とは?

「登録販売者制度」というのも、セルフメディケーションを支える1つです。
薬剤師だけでは今後のセルフメディケーションをまかないきれないと考え、それなら市販薬については詳しい人を薬局やドラッグストアにたてようと、平成の時代に創設されました。
 
これも、国としてセルフメディケーションを推進していきたいから、ということですね。
 

セルフメディケーション税制の対象となる市販薬とは?

セルフメディケーション税制のマークがついている市販薬で、「スイッチOTC薬品」といわれるものは、処方薬の成分が市販薬に切り替わったものです。
 
※OTCとは、英語のオーバー・ザ・カウンターの略で、カウンター越しに薬を販売するという意味です。
そして「スイッチOTC」とは、処方薬の成分が市販薬に切り替わった(=スイッチした)というものになります。

 
花粉症の薬の代表的な薬であるアレグラもスイッチOTCです。
アレグラにはフェキソフェナジンという成分が入っていますが、他のメーカーからもフェキソフェナジンの入った市販薬が販売されています。
 

スイッチOTCを賢く選べばかなり安くなることも!?

広告費を使わないプライベートブランドに近いような市販薬であれば半額くらいのものもあります。
 
花粉症で病院を受診した場合は初診料と診察料を支払いますが、さらに薬代もかかるとなると、市販薬のプライベートブランドとして販売されているフェキソフェナジンの薬を買ったほうが、意外と安く済ませられることがあります。
 
また、花粉症シーズンのクリニックは、患者さんが押し寄せて待ち時間が長いケースも多いです。
市販薬の場合ドラッグストアやネットでの購入もできますので、待ち時間がほとんどなく買うことができます
 
まだインフルエンザの患者さんなどもいらっしゃるので、そういうことが心配だと思われる方は、市販薬の中でそのような薬を選ぶというのはありかと思います。
 

ただし、お子さんや飲み合わせに不安のある方は一度相談を!

小さいお子さんや、高齢者の方などは、出ている症状が本当に花粉症なのか、ということを診てもらうために病院を受診することをお勧めします。
また、持病がある方や、他にお薬を飲んでいる方は、薬局やドラッグストアに行って薬剤師または登録販売者に相談してください。
 
日頃から健康であり、花粉症の季節だけ症状がでて困っている、毎年服用している薬が決まっている、というような方であれば市販薬の成分を確認して購入してもいいのではないでしょうか。

 

医科歯科ドットコム編集部コメント

すでに病院を受診して自分の症状を把握できている場合は、市販薬の「スイッチOTC」を活用することがセルフメディケーションとなるでしょう。
受診するタイミングを逃したときや費用のやり繰りの一助になりますね。
 
ですが、症状に不安があるときや持病があって飲み合わせが分からないときは、安易に自己判断せずにクリニックの受診や、または薬剤師さんや登録販者さんなどの専門の方にご相談するようにしてください。

 
取材日:2020年1月31日
 

プロフィール

児玉 亮二(こだま りょうじ)
株式会社ミナカラ
ミナカラ事業・ディレクター・管理薬剤師
 
京都薬科大学薬学部卒業
急性期病院薬剤師、薬局薬剤師勤務を経て株式会社ミナカラ入社
より多くの人に質のいい医療を提供することを目標に活動中
 
薬剤師として、オンラインや電話でお薬の相談対応を行うことはもちろん、ミナカラ薬局コンテンツ記事(https://minacolor.com/)の執筆・医療監修や事業の企画立案などを行う
LINE薬剤師相談サービスの立ち上げやOTCのネット販売やPB開発に参画