スポーツ選手や芸能人の発症で度々注目される白血病。
不治の病のイメージを持ちがちな白血病の実態と治療に迫ります。
全身を回っている血液を治療する方法は、主に化学療法(抗がん剤治療)です。
江戸川病院の腫瘍血液内科副部長である明星智洋(みょうじょうともひろ)医師に、白血病の治療の選択肢と治療の進歩について教えていただきます。
白血病の治療は主に化学療法がメイン
がんの治療法というのは大きく4つです。
1.手術
2.放射線治療
3.化学療法(抗がん剤治療)
4.免疫療法
そのうち、手術と放射線治療は白血病の治療には適しません。
全身を回っている血液をメスで切るということはできず、放射線治療にしても全身に放射線を照射するということは、移植前提でない限りはおこないません。
白血病では、3つ目の治療である抗がん剤治療が主な治療法です。
抗がん剤の種類はたくさんあるのですが、「急性骨髄性白血病」の場合は主に2種類の抗がん剤を組み合わせて治療を行います。
「急性リンパ性白血病」の場合は、複数の抗がん剤を組み合わせて治療を行います。
もし、抗がん剤治療がうまくいかない場合は「骨髄移植」ということも考えます。
また、「急性骨髄性白血病」も骨髄移植を行います。骨髄移植には年齢の制限がありドナーがいなければ移植はできません。
小児の「急性リンパ性白血病」に画期的な免疫療法「CAR-T療法」
小児の「急性リンパ性白血病」に対しては、「CAR-T療法」という免疫治療の一種で、こちらが2018年から保険適用になりました。
一回の治療で約3,400万円しますが、条件を満たせば一回の治療で8割の人が治る画期的な治療です。
白血病患者さんのT細胞を採取し、遺伝子組み換えを行ったうえで増殖し、患者さんの体内に戻すという治療法です。
他人の骨髄を利用する骨髄移植とは異なり、「CAR-T療法」は自分の細胞を利用しています。
その細胞でがん細胞、白血病細胞と戦わせるため、骨髄移植と原理や理論は似ています。
ただし、これをやるには一定の条件が必要で全員が受けられるわけではありません。
あくまで基本は抗がん剤治療がメインとなります。
実際に「急性骨髄性白血病」の場合は、最短でも半年程度の抗がん剤治療が必要となってきます。
「急性リンパ性白血病」の場合、移植をしなければ最短で2年くらいの抗がん剤治療が必要となり、長い闘病生活になることは変わりありません。
「慢性白血病」の治療の進歩で98%の人が治る薬も開発!
慢性白血病も「慢性骨髄性白血病」と「慢性リンパ性白血病」があります。
「慢性骨髄性白血病」に関しては、20年くらい前までは同様に抗がん剤治療や骨髄移植を行っていました。
それでだいたい5年後に生きている人の割合が60%という成績でした。
しかし15年程前に、イマチニブという画期的な新薬が登場しました。
これは分子標的薬という薬剤で、白血病の原因遺伝子をピンポイントでブロックするというものです。
こちらは飲み薬で一生飲む必要がありますが、「慢性骨髄性白血病」が95%治るようになりました。
今はさらにその薬が改良され、98%の人が治る時代になっています。
「慢性骨髄性白血病」と診断されても慌てる必要はなく、むしろ糖尿病や高血圧と診断された人の方が、寿命が短い可能性もあります。
それだけ今の治療法、新薬の開発というのが日進月歩で進化している証拠でもあります。
もう一つ「慢性リンパ性白血病」というのがありますが、日本では非常に少なく欧米に多い病気です。
発症してしまった場合でも治療の為の新薬は豊富にあります。
欧米では新薬の開発が進んでいるため、飲み薬や点滴の薬が複数あり、「慢性リンパ性白血病」も決して恐れる必要のない病気になってきています。
医科歯科ドットコム編集部コメント
不治の病のイメージが強い白血病でしたが、治療法、治療薬は大きく進歩し治癒率が上がっていることを知れました。
治療に時間がかかり、きついことも多そうなイメージは残りますが実際はどうなのでしょうか。
続いて治療の副作用を含めお話いただきます。
取材日:2019年10月16日
プロフィール
腫瘍血液内科副部長
明星 智洋 医師
<資格>
日本内科学会認定内科認定医
日本臨床腫瘍学会認定がん薬物療法専門医、指導医
日本血液学会認定血液専門医、指導医
日本化学療法学会認定抗菌化学療法認定医、指導医
日本癌治療学会認定がん治療認定医
インフェクションコントロールドクター(ICD)
Total nutritional therapy修了
<略歴>
2001/3 熊本大学医学部卒業
2001/4 岡山大学医学部附属病院腎・免疫・内分泌・代謝内科
2001/10 国家公務員共済組合連合会 呉共済病院 内科
2003/4 国家公務員共済組合連合会 呉共済病院 血液内科医員
2004/4 国家公務員共済組合連合会 虎の門病院 血液科
2005/4 癌研究会有明病院 化学療法科・血液腫瘍科
2009/4 江戸川病院 腫瘍血液内科
2009/10 同医長
2012/4 同副部長
2016/1 東京がん免疫治療センター長(兼任)
2016/10 Hyper medical creator就任
2018/2 プレシジョンメディスンセンター長(兼任)
<専門分野>
がん薬物療法(抗がん剤治療) 血液疾患(良性・悪性含む)
感染症管理、免疫療法日々、市中病院にてがん診療の最前線で抗がん剤中心の治療をおこなっている。
Hyper medical creatorとして、上場企業やベンチャー企業と、医療現場をつなげることをライフワークとしており、ユーグレナ、資生堂などとも連携している。
オンライン診療や栄養、人工知能、職場の環境改善など幅広い領域で、橋渡しをおこなっている。
その傍ら、趣味として梅酒が健康にどう影響するのか、どの料理と合うのかなど探究し、一般社団法人梅酒研究会設立、全国での梅酒まつりや品評会を主催している。
<出演・監修>
朝日放送 たけしの『みんなの家庭の医学』出演
映画『ゆめはるか』医療監修、出演
映画『サクラ花』医療監修
土曜ワイド劇場『切り裂きジャックの告白』医療監修
映画『うまれる ずっといっしょ。』アドバイザリーボード
その他、新聞などのメディアへの掲載多数
著書『先生!本当に正しい「がん」の知識を教えてください!』(すばる舎)
<その他>
株式会社オリィ研究所 顧問
株式会社マイロプス 顧問
一般社団法人梅酒研究会 代表理事
MRT株式会社 取締役