冬場の癒し空間が一変!?年間2万人が亡くなる「ヒートショック」の危険性とは?【現役医師インタビュー】

 
入浴時に突然死するというヒートショック。
寒い季節のお風呂は癒しの場ではありますが、ヒートショックは冬に頻発するようです。
それはどのような現象なのでしょうか?
今回は内科医であり、ヘルスケアの連携に関わる活動をされている「あすかクリニック」院長 織田 聡 先生にお話を伺いました。
 

 

冬によく耳にする「ヒートショック」とは?

冬に、寒い脱衣場で服を脱ぎ、その後にものすごく熱いお風呂に入ったときなどに、寒暖差による血圧の変動で意識を消失して、そのまま溺死してしまうこともある、という一連の現象がヒートショックといわれています。

 

実は建築業界の和製英語「ヒートショック」

そもそもヒートショックという言葉ですが、今はかなり認知されてきましたが、これは医療の現場から出た言葉ではなく、どうやら建築やリフォームの業界から出てきた和製英語のようです。
 
お家をリフォームをする際に、「ヒートショックにならないように暖かく改装しましょう」「新しく暖房を付けましょう」という文脈でこの言葉が出てきたようで、ここ10年くらいの新しいものだと考えられています。

 

いきなり熱いお風呂に入ると失神する可能性も・・・

よく心筋梗塞になる方は、暖かいところから寒いところに出た際に血管がきゅっと収縮するために、心筋梗塞を起こしやすいといわれています。
なので、急に寒いところに出るという行為は、心筋梗塞や脳梗塞のリスクがそれなりに高い場面と言えるでしょう。
 
これとは逆に、ヒートショックは寒いところできゅっと縮まった血管が、温かいお風呂でパッと広がります
この血管が広がると何が起きるかというと、体内には約5ℓの血液があるといいますが、この血液の容器が広がるということです。
 
お風呂に足から入って温まるにことによって末端の血管が広がると、本来なら脳にいくはずだった血液が、血管が広がった分だけ下にいってしまうので、血圧が下がってしまいます
それが出来なくなって、ヒートショックによって意識を消失することが起きているのではないかと言われています。

 

実はまだナゾな部分があるヒートショック

ヒートショックで亡くなられる方はとても多いと言われるのですが、本当にヒートショックのメカニズムで亡くなられているかどうかは、実はまだ分かっていないところがあります
 
なぜかというと、その現場を見ている人はいなくて、だいたい亡くなった後で発見されることが多いからです。
 
たとえば解剖などの病院での処置においても、いわゆる現場の証拠があるだけで、何が起きたかを証明するものが残りません。
状況としておそらく、ヒートショックによるものでしょうと言えるだけになります。
 
ヒートショックから生き残った方がいるという話を聞いたことがあります。
その方は、寒い時期に熱いお風呂に入って、どうも金縛りのようになって身体が動かなくなったそうなのですが、なんとかお風呂の栓を抜くことに成功したので、溺死されず救出されたようです。
 
おそらくヒートショックを起こすとそのまま意識を失い湯船の中で溺死してしまう、ということだと思われます

 

「ヒートショック」と「ヒートショックプロテイン」とは全く別物!

最近になって、ヒートショックという言葉が浸透してきましたが、もともと医療用語でヒートショックというと、ヒートショックプロテインという細胞が熱を受けたときに、生き抜くためにたんぱくの高次構造を修復するようなシステムの話のことをイメージされる医師も多いかもしれません。

 

医科歯科ドットコム編集部コメント

冬場に最近よく聞く言葉でしたが、起こった状況からそう呼ばれているという珍しい発生の用語でした。
 
急激な寒暖差が人体に多くの負担を与えるということはわかりましたが、誰しもにリスクがあるのでしょうか。
高齢者が多いイメージですが、それはなぜでしょうか。引き続き疑問を次回、織田先生に教えていただきます。
 
取材日:2020年1月8日
 

プロフィール

織田 聡医師

医師 薬剤師 医学博士 僧侶
医療法人社団聡叡会あすかクリニック院長
一般社団法人健康情報連携機構代表理事
LITERRAS MEDICA株式会社 CEO 代表取締役社長
株式会社アクセルレーター 取締役
 
日本型統合医療を提唱し、西洋医学と補完医療の有機的連携構築が専門。東洋医学的哲学を基盤に、ICTやAIなどを活用した先進的医療にも精通する。
 
現役医師として臨床業務の傍ら、少年野球からe-Sportsまで多くのスポーツ振興に関わり、ヘルスケアデバイスの開発や医療用アイソトープ国産化など種々の事業にも参画している。
 
また、僧籍(臨済宗妙心寺派)をもち、早くから禅の医療や介護への利用を模索している。寺院を活用した地域コミュニティ再生にも期待されている。