【現役医師に聞く】平成から令和へ。医師不足や労働問題など最近の医師へのニーズの変化について


全国的に、医師の診療科による偏在や地域偏在が叫ばれています。
そこで今回は病院や診療所に、医師を紹介する事業を運営されている小川智也(おがわともなり)医師から、昨今の医師不足の現状などお話を伺いました。
 

医師不足について

――診療科、地域など医師不足について現状教えてください
 
診療科は対応件数が多い内科、これは昔から変わらないです。
それに加え、緊急対応が大変な産婦人科、小児科などが慢性的に足りていません。
 
地域に関しては地方が大変と言われがちですが、都心に近い埼玉県は人口との比率としては全く足りていません。
意外と都心部でも深刻な医師不足であるエリアがあります。
 
――日本の総人口に対して病院やクリニックの数は足りていますか?
 
地域によって、充足している病院(診療科)もあれば、医療ニーズに見合う医院が足りない地域(診療科)もあります。
日本の総人口というよりは、疾病を持つ人口に対しての医院数とのバランスを考えることが必要だと思います。
 
――ベッドの数は足りていますか?
慢性期、亜急性期なのかで違いますが、慢性期は現状足りていると言われています。
昔は長期間の入院が多かったのですが、医療の進歩により入院の日数が減っています。
 
また在宅に関してご自宅のベッドが病床の代わりであるという考えがありますので現状は充分に足りている認識です。
 
――医学部を卒業してから臨床医になる割合はどのくらいでしょうか?
 
医学部に入学した学生の約95%が臨床医になるといわれており、臨床医以外の道を選ぶのは、ごく一部と考えられています。
 
臨床医がまだまだ不足していると考えられる中、過労を極める医師の労働を
削減するため、臨床現場における医療専門職の協力体制の強化や、業務分担の
徹底が求められています。
 
――それでは医師をサポートする必要がある技師の方はいかがでしょうか?
 
技師のニーズもまだまだ高まりつつあります。
近年では、医療機器の進歩により、数々の高度医療機器が臨床現場で活用されています。
そのため、医師同様に技師の方も最新医療機器の知識をより多く身につけ、臨床現場で活かすことが求められています。
 
――医師の労働時間の問題はいかがでしょうか?
 
特にこの2、3年は重要視されてくると思います。
ただ単に医師の労働時間を制限するだけでは、医療を必要とする方々に適切な医療を提供することができない可能性も出てくる危険性もあります。
医師の働き方改革は、だままだ課題も多く残る中、社会全体の理解と取り組みが必要と考えます。
 
――最近の医師へのニーズはどのように変化しているのでしょうか?
 
最近は、臨床医としてのニーズの他にも、産業衛生に関わる業務(産業医)や健康診断業務や介護福祉に関連する業務にもニーズが増えつつあります。
 

医科歯科ドットコム編集部コメント

埼玉県の医師不足は意外でしたね。
医師不足や医師の労働時間も時代背景とともに変わってきていますね。
 
取材日:2019年12月13日
 

プロフィール

小川智也(おがわともなり)
救急科専門医 MBA

2002年 山田赤十字病院勤務
2004年 大阪府立千里病院救急センター勤務
2005年 国立病院機構大阪医療センター救命救急センター勤務その後も、プライマリ・ケアから高度救命救急医療に至るまでの知識と技能を幅広く習得。

国内トップクラスの症例を誇る医療機関で救急医療を実践する傍ら、英国MIMMS(Major Incident Medical Management and Support)資格を取得し、救命治療・集中治療に限らず、ドクターカーで災害現場に出向き医療を行う等、救急災害医療にも従事。

2012年 英国国立ウェールズ大学院MBA取得
医師としての専門的視点とMBAとしての経営的観点を交えた広い視野で国内の医療システムの問題点解決に向けた取組みを行うべく、現職のMRT株式会社に入社。医療課題の解決を事業に活かすべく医師の視点を活かし、ITを活用した医療サービスを提供。

2019年4月 MRT株式会社代表取締役社長に就任
2019年11月 ソフトバンク株式会社とトヨタ自動車株式会社などの共同出資会社である、MONET Technologies株式会社が設立した「MONETコンソーシアム」に参画

自動運転とMaaS(Mobility as a Service)を融合させたAutono-MaaS事業へ、他の参画企業と連携しながら「移動における社会課題の解決や新たな価値創造」という目的において医療分野での社会的課題を解決する新たなサービスの創造を目指す。