【救急医に聞く】年越しそばを食べたら…「そばアレルギー」で口の痒み、目の腫れ、呼吸困難 !10%近くが重篤化する?


年末の大晦日には、年越しそばを食べて1年のしめくくりとする家庭も多いのではないでしょうか?お子さんに年越しそばを食べさせたいけどアレルギーが心配という場合は、症状の見分け方を知っていると役立ちます。
 
また、子どもだけでなく大人もそばアレルギーになるのでしょうか?どのような状態になったら危険だと判断できるのでしょうか。救命救急の現場で活躍されていた小川智也(おがわともなり)医師に、救急医療のご経験からそばアレルギーに対する知識と心構えを伺いました。
 

そばアレルギーで5~10%が重篤化し救急搬送されるケースもある!?

――小川智也先生は救急医療をされていたそうですが、そばアレルギーで救急搬送される人というのは実際にいるのでしょうか?
 
そばアレルギーで救急搬送されてくる場合は、ショック状態であったり、もしくは全身にじんましんができてしまった状態などで運ばれてくることが多いですね。
 
ショック状態というのは「アナフィラキシーショック」と言うのですが、呼吸が止まってしまったり、息苦しくなってしまうような重篤な症状を起こす場合があるので、そういう場合は救急搬送で病院に来ることが多いです。
 
――そもそも、そばアレルギーとはどのような症状でしょうか?
 
たとえば本当に軽症な部類のアレルギー症状でしたら、そばを食べたら少し口が痒くなってくる、もしくはポツポツとじんましんが出るなどがあります。
 
場合によってはじんましんが全身にバーっと広がったり、顔が赤くなったり、唇が腫れたり、目がすごく腫れぼったくなったりしますね。そういう場合は、アレルギー反応が出ていると判断して、薬を飲んでいただくことがあります。
 
――いきなり危険な症状が出ることはありますか?
 
だいたいそばアレルギーの場合は、統計的には5~10%くらいは、いきなり重篤化するといったデータが出ています。つまりショック状態に陥ったり、重症化しやすいタイプがあるということです。
 
なので、アレルギーの中でも、そばアレルギーは特に注意したほうがいいでしょう。そして、小児といわれるお子様や乳幼児の場合は、そばアレルギーで重症化する確率は10%とはいえ、もし症状が重くなってしまった場合には、悠長なことは言っていられません。
 
そばアレルギーがある人の場合はそもそも、そばを食べないようにする、何か少しでも症状が出てきたら必ず食べるのをやめてくださいという話をしています。
 

すぐに身体の変化に気付いて対処することが大切です

――その場で症状に対処できることはありますか?
 
まずは身体の変化に気付くことですね。特にお子様の場合ですと、たとえば何だか腫れぼったいとか、身体がだるい熱っぽいなど、自分からは言わないですよね。
 
お父さんやお母さんから見て、ちょっといつもと違うなとか、少し目が腫れぼったくて色が違うな、熱でもあるのかな、というように身体の変化に気付いた場合、一見元気そうに見えても急激に症状が変化することがあるので注意が必要です。
 
なぜかと言うと、そばのアレルギー症状はアレルギーを起こす原因物質(抗原)の接触状況により、局所的な症状から全身症状に急激に変化する場合があるからです。心配だと思ったら、なるべく早く医師に相談した方がいいですね。
 
――どんな病院でどんな検査をするといいですか?
 
もともとアレルギーがあるかなと思ったら、まずは、かかりつけの医師に相談してみてください。内科、小児科、アレルギー科だけでなく、耳鼻科や皮膚科でも検査を受けることができる場合が多く、血液検査をすれば大体のことは分かります。
 
――子供はアレルギーに反応すると目をこすったりしますよね。
 
お子様の場合は、やはり皮膚が柔らかくて腫れやすいですね。そうすると目だけではなく口も腫れてくきます。目が腫れるだけだったらまだいいのですが、口が腫れると唇どころか喉の奥も腫れてきます。
 
喉の奥が腫れるということは、空気の通り道がだんだん狭くなってくるので、あっという間に息ができなくなってくるといった怖い状態に陥ります。
 
少し唇が赤いなとか、舌がちょっと腫れて大きくなったと思ったら、すぐに病院に行ってもらったほうが安全ですね。
 
――大人の場合、今まで無症状だったのに急に症状が出る人はいますか?
 
もともと、そばアレルギーがなかったのに急に症状が出ることは、稀にですがあります。体質が変わったりとか、もしくは体調が悪いときなどに、ちょっとした刺激で何らかの症状が起きてしまうことはあるでしょう。でもそれは、ごく稀なことですね。
 
――子供のほうがなりやすいということはありますか?
 
そばアレルギーは乳幼児に出ることが多いですね。逆に甲殻類アレルギーは小学生か、それ以上のお子さんにでることが多いです。もともと、子どもの頃からそばアレルギーという方は、成人になってからもそばアレルギーが出ることが多いです。
 

ゆで汁に触れるとそばを食べなくてもアレルギーがでることもある!?

だいたいそばに含まれているたんぱく質によってアレルギー反応が出るので、そば自体を食べなくても、そばに触れる、そば粉を吸ってしまう、ゆで汁を口に含んでしまうだけでもアレルギーが出る場合があります。
 

医科歯科ドットコム編集部コメント

そばアレルギーの10%近くの人が重篤化してしまうとのことで、特に注意が必要なようです。身体の変化に気付いたら躊躇せずに病院に行くようにしましょう。
 
また、アレルギー物質に敏感な体質だと感じているのであれば、事前に血液検査(アレルギー検査)を行うとアレルギー物質を理解し避けることができます。アレルギー科、耳鼻科、皮膚科、内科でも良いので相談してみましょう。
 
取材日:2019年12月13日
 

プロフィール

小川智也(おがわともなり)
救急科専門医 MBA

2002年 山田赤十字病院勤務
2004年 大阪府立千里病院救急センター勤務
2005年 国立病院機構大阪医療センター救命救急センター勤務その後も、プライマリ・ケアから高度救命救急医療に至るまでの知識と技能を幅広く習得。

国内トップクラスの症例を誇る医療機関で救急医療を実践する傍ら、英国MIMMS(Major Incident Medical Management and Support)資格を取得し、救命治療・集中治療に限らず、ドクターカーで災害現場に出向き医療を行う等、救急災害医療にも従事。

2012年 英国国立ウェールズ大学院MBA取得
医師としての専門的視点とMBAとしての経営的観点を交えた広い視野で国内の医療システムの問題点解決に向けた取組みを行うべく、現職のMRT株式会社に入社。医療課題の解決を事業に活かすべく医師の視点を活かし、ITを活用した医療サービスを提供。

2019年4月 MRT株式会社代表取締役社長に就任
2019年11月 ソフトバンク株式会社とトヨタ自動車株式会社などの共同出資会社である、MONET Technologies株式会社が設立した「MONETコンソーシアム」に参画

自動運転とMaaS(Mobility as a Service)を融合させたAutono-MaaS事業へ、他の参画企業と連携しながら「移動における社会課題の解決や新たな価値創造」という目的において医療分野での社会的課題を解決する新たなサービスの創造を目指す。