【内分泌内科医に聞く】汗かきで太りにくい症状?「バセドウ病」の手術や放射線治療について解説

 
やたらと暑がりになって、食べても全然太らない、動悸がするといった症状が代表的な「バセドウ病」。
 
前回ではバセドウ病の3つの治療法について、聖路加国際病院や表参道の伊藤病院内科に在籍していた内分泌内科の専門医である小菅 由果(こすがゆか)医師にお話を伺いました。
 
この記事では、バセドウ病の手術や放射線治療について解説していただきます。
 

 

バセドウ病の手術はどんな場合に受けるのですか?

大きく何点かあるのですが、2種類の甲状腺の薬がありますが、そのどちらを飲んでも副作用が強く出すぎてしまった場合、または重篤な好中球減少症という副作用がでてしまったというような場合には飲み薬を使うことができませんので、ひとつの選択肢として手術がでてきます。
 
そして甲状腺がものすごく大きい場合は100g、200gまで甲状腺が大きくなってしまう人もいて、やはり飲み薬だけで治療するのが難しいことも多々あるので、この場合も手術がひとつの選択肢になります。
 
子供や若いかたに関してはまず服薬が第一選択になるのですが、副作用などが出たときに大人ですと手術以外に放射線治療も選択肢になりますが、基本的に子供や18歳以下のかたには放射線治療はあまり行っておりません。。子供に関しては内服薬で副作用が起こってしまった場合に、手術が選択肢のひとつになります。

 

手術後について教えてください

やはり甲状腺をすべて取ってしまいますと、身体のなかで甲状腺のホルモンをつくることができなくなってしまうので、甲状腺のホルモンが正常な範囲でいわゆる基準値というところに入ってくるように、甲状腺ホルモン剤を調整することになります。

 

放射線での治療について教えてください

甲状腺の場合は外から放射線を当てる外照射という方法ではなく、放射線のカプセルを飲む内照射という方法で治療していきます。

 

放射線治療の副作用はありますか?

バセドウ病の場合に放射線治療をしますと一時的にホルモンが上がったり突然ホルモンが下がったり、放射線治療のあとに甲状腺ホルモンの変動が急にでる場合があります。
 
放射線の治療を行ったあとで、特に治療して半年以内は、毎月かかりつけ医のところに行って甲状腺のホルモンが変動していないかどうか、上がりすぎたり下がりすぎたりしていないかどうかのチェックが必要になってきます。
 
放射線治療をすると次の日から良くなると思う方もいるかもしれませんが、そういったホルモンの変動を繰り返しながら、だいたい半年から1年くらいかけてホルモンが落ち着いてくる、という治療法になります。

 

放射線治療は何回受けるものでしょうか

放射線治療は基本的には1回の治療で行います。
ただ、使える放射線の量が外来と入院でそれぞれ上限が決まっているので、甲状腺の大きさを考えてその大きさにあわせた放射線の量のカプセルを飲むかたちになります。
 
また、本来であれば入院して放射線のカプセルを飲まなければならない甲状腺の大きさの人でも、ときどき外来だけでの治療を希望される場合もあります。
 
そういった場合には、外来で飲める最大の放射線の量しか取り込むことができないので、1度の治療では治療しきれず2回目の治療や3回目の治療が必要になるかたもいます。
3回目になるかたは少ないですけれども。
 
だいたい最初の治療をしてから1年くらいのところでどれくらいホルモンが下がっているのかをみて、次の2回目をするかどうかを決めていきます。だいたいのかたが1回の治療で終了ということになります。

 

医科歯科ドットコム編集部コメント

バセドウ病の治療ではどんな場合に手術や放射線治療が選択肢となるのか、またそのメリットやデメリットを小菅由果医師に解説していただきました。
次回では、バセドウ病の患者さんの日常生活について注意すべき点などを伺っていきます。

 
取材日:2019年10月17日
 

プロフィール

小菅 由果医師
元聖路加国際病院内分泌代謝科
元伊藤病院内科
日本内分泌学会 内分泌代謝科専門医
日本糖尿病学会 糖尿病専門医
日本甲状腺学会甲状腺専門医