太りにくい、暑がりという症状が気になる「バセドウ病」|治療法について内分泌内科医が解説

 
前回ではバセドウ病の検査方法について、日本内分泌学会 内分泌代謝科専門医の小菅 由果(こすが ゆか)医師にお話をお聞きしました。
 
今回はバセドウ病の治療について、具体的にどのように進めていくのかを教えていただきます。
 
バセドウ病と診断された場合、どんな治療法があるのでしょうか?
 

 

バセドウ病の治療法は服薬・手術・放射線の3つ

治療法に関しては大きく分けて3つあります。

 

①服薬による治療法

3つの治療の中では、いきなり手術や放射線の治療をするよりも始めやすい治療法になります。
甲状腺のバセドウ病を治す薬には、「メルカゾール」「プロピルチオウラシル」という薬があります。
ですが、この2つの薬はともに非常に副作用が多い薬です。
 
飲み始めて最初の3ヶ月間は副作用が出やすい期間になるので、最初は2週間から3週間置きにかかりつけの先生のところで副作用の有無のチェックが必要になります。
 
目安としては、甲状腺の大きさやバセドウ病の重症度にもよりますが、約2~3年ほど薬を継続して飲んだあとは、薬の量を減らして一定期間は安定していれば中止にしていくことができる人も多くなります。

 

②手術による治療法

以前は少しだけ甲状腺を残してその他を取る亜全摘(あぜんてき)手術を行っていました。
少し残した甲状腺が働くので甲状腺のホルモンが下がるものの下がり過ぎない、という状態をつくることができました。
 
しかし、残した甲状腺からバセドウ病が再発するという報告が増えてきたため、最近では甲状腺を最初からすべて取ってしまう全摘(ぜんてき)手術に切り替わってきています。
 
メリットは、必ずバセドウ病が治るということです。
デメリットは、甲状腺を取ってしまうので、甲状腺ホルモンを作れなくなります
 
手術のあと足りない甲状腺ホルモンを補充するためにずっと甲状腺のホルモン剤を飲む必要があります

 

③放射線による治療法

放射線の入ったカプセルを飲むことによって甲状腺を焼いてホルモンを下げていく治療です。
 
具体的には、ヨウ素というものに放射線がついているカプセルを飲むことによって、活発化したバセドウ病になっている甲状腺のところに放射線が効いて甲状腺を焼き、ホルモンを下げていきます。
 
ですが、カプセルを飲んでからすぐにホルモンが下がるわけではなく、だいたい半年から1年かけて、徐々にホルモンが正常な値に近づいていくことになります。
 
それに合わせてそのときに飲んでいる甲状腺の薬を調整していき、出来れば最後は中止するところまでもっていくことが目標になります。
 
ただ、薬を飲まずに甲状腺のホルモンが正常になったという人もいます。また、放射線が効くことで甲状腺ホルモンが下がりすぎてしまう人もいます。
 
そういった人に関しては、下がった分だけ甲状腺のホルモン剤を飲んで足りなくなった分を補充していく、というかたちの治療法をとります。

 

服薬による副作用が出る割合は高いが、必ずしも出るわけではない

甲状腺のバセドウ病を治す薬には、一般的なかぜ薬や胃薬などと比べると、副作用の出る割合が高い薬です。
 
しかし、必ず副作用が出るわけではないですし、すべてが重篤な副作用になるというわけではありません。
 
一般的には皮疹(ひしん)といってかゆみが出たり、肝臓の数値が少し悪くなる、といった副作用が出ることが多いです。
 
その副作用に関しても、薬の量を減らすことで良くなる方もいるので、かゆみが少し出てきたときにはかゆみ止めの薬を一緒に飲む、肝臓の数値が少し上がったときは肝臓の薬を一緒に飲むことで服薬を続けていく方も多くいます。
 
また甲状腺のホルモンが下がってくると薬の量を減らすことができるので、薬の量が減れば副作用も改善してきます。
 
どちらかというと、甲状腺のホルモンを早く下げることによって甲状腺の薬を減らしていくことを目標にしていきます。
 
副作用が出たからすぐに薬を中止するということではなく、軽いかゆみの副作用にはかゆみ止めといったように、かゆみ止めや肝臓の薬などを飲みながら甲状腺の薬を続けていくことになります。

 

最初の3ヶ月は副作用が出やすい。高熱が出たらすぐに先生に相談を

特に薬を飲み始めて最初の3ヶ月間に副作用が出やすいといわれています。
その期間に関しては、可能な限り2週間置きくらいに採血をして、肝臓の数値が上がっていないか、かゆみがでていないかのチェックしていきます。
 
また、一番大きな副作用でこれは非常に重大な副作用になるのですが、白血球というばい菌と戦ってくれる細胞があります。
そのうちのひとつの好中球という細胞が減ってきてしまう副作用がごく稀に起こります。
 
好中球減少症という副作用が出た場合には、すぐに飲み薬を中止にしないといけません。
好中球減少症というものが起きてきますと、ばい菌と戦う細胞が減ってしまうことによって38度といった高い熱が出ることがあります。
 
甲状腺の薬を始めて3ヶ月以内に高い熱が出るような場合には、早めにかかりつけの先生に相談してください。

 

服薬を止めるにはTRAbという抗体の量や甲状腺の大きさが関係

TRAbという抗体の量がものすごく多い場合や甲状腺がものすごく大きい状態で発見され、なかなか数値が下がりにくい人も多くいます。
 
状況によっては治療がうまくいくと、抗体が下がって最終的に薬を止められる、という人もいます。

 

医科歯科ドットコム編集部コメント

バセドウ病の治療法は大きく3つあり、今回は服薬による治療法について小菅由果医師に詳しくお話を伺うことができました。
引き続き、どんな場合にバセドウ病の手術が必要になるのか?
 
放射線の治療を受けた後はどうなのか?などを詳しく教えていただきます。

 
取材日:2019年10月17日
 

プロフィール

小菅 由果医師
元聖路加国際病院内分泌代謝科
元伊藤病院内科
日本内分泌学会 内分泌代謝科専門医
日本糖尿病学会 糖尿病専門医
日本甲状腺学会甲状腺専門医