【内分泌内科医に聞く】のど元を触ってしこりを感じたら「バセドウ病」の可能性も?意外と身近なバセドウ病の検査方法を解説

 
バセドウ病の自覚症状には、ドキドキするといった動悸や暑がり、食べても太らないという症状があります。
 
それらの症状が気になるときは、病院の何科に行けばいいのでしょうか?
 
またどんな検査が必要になるのでしょうか?
 
バセドウ病について引き続き、内分泌内科の専門医である小菅 由果(こすが ゆか)医師にお話を伺っていきます。

 

バセドウ病の検査方法を教えてください

バセドウ病の診断方法としては、
①血液検査、
②甲状腺を触る触診、
③超音波
の3つ
が大事な検査になります。
 
基本的にこれらの検査は内分泌内科でしていますので、心配な方は受診してもよろしいかと思います。
 
ときどき内分泌内科という名前がない病院もあるので、その場合には糖尿病代謝内科などでも検査できます。

 

① 血液検査について

採血での検査になりますが、項目としてTSH、FT3、FT4、という3つの項目が非常に重要になります。
 
FT3、FT4、は甲状腺のいわゆるホルモンを測っていますので、この値が非常に高くなっているとバセドウ病の可能性があるということになります。
 
また、TRAbという抗体をもっていることでバセドウ病と診断することができるので、この抗体をもっているかどうかも採血で検査します。

 

② 触診について

あと甲状腺というのは、バセドウ病になると、だんだん働きが活発になることによって大きくなってきてしまうことがあるので、触診で甲状腺が大きくなっていないかをチェックします。

 

③ 超音波検査について

また超音波の検査では、甲状腺が実際にどれくらい大きくなっているのか、またはいないのか、甲状腺のなかでどれくらい血の巡りがよくなってしまっているのか、といったことを全てチェックできます。
ですので、この超音波の検査も非常に重要な検査になります。

 

甲状腺の大きさは自分でも分かりますか?

通常、何も病気のない人は甲状腺を触っても分からない大きさです。だいたい大きさとしては20gくらい、といわれているのであまり大きくないですね。
 
ただバセドウ病になって甲状腺が活発な動きになりますと、だんだん大きくなってきます。
 
30g、40g、と大きくなってくると触ったときに外から触れることができるようになるので、甲状腺が大きくなっていないかのチェックもひとつの大事な要素になります。

 

超音波の検査ではどんなことが分かりますか?

バセドウ病になると、身体の新陳代謝がよくなるので血液の流れが速く、多くなります。
 
これは甲状腺そのものに関しても例外ではなく、甲状腺を流れる血液の量が多くなるので、エコーという超音波の検査で診ますと血液がどれくらい多く流れているか、ということも一緒にチェックすることができます。
 
血液の量の多さ、また実際に何センチ大きくなっているかも測ることができますので、喉仏を触って分からないところもエコーで測ることによって明らかにすることができます。

 

バセドウ病の抗体をもっていなければ安心でしょうか?

ご家族に甲状腺の病気の方がいて、お子さんの血液検査を幼少期に行い、抗体をもっていなかったとしても、もうバセドウ病にならないというわけではありません。
 
年齢を重ねるに従って抗体をもっている人の数は増えていくので、どこかのタイミングで抗体が陽性になる可能性は十分にあります。

 

陽性になった抗体が下がることはありますか?

抗体の上がり方がすごく小さい人もいて、その場合は自然に抗体が下がることも稀にあります。
 
また抗体が発現するといいますが、女性の場合は抗体が出てきてしまうきっかけになるのが妊娠や出産といわれているので、それまで何もなかった人が妊娠や出産を機に、バセドウ病を発症することもあります。

 

バセドウ病と間違いやすい病気について

正式な病名でいうと、難しい名前ですが、亜急性甲状腺炎(あきゅうせいこうじょうせんえん)や中毒性甲状腺結節(ちゅうどくせいこうじょうせんけっせつ)という病気などがあります。
 
亜急性甲状腺炎は風邪のウイルスなどが先行するともいわれていますが、はっきりとした原因が分かっていないもので、ひとつの炎症性の病気になります。
 
炎症によって甲状腺の細胞が壊れてしまうのですが、イメージでいうと甲状腺の細胞のなかに入っていたホルモンが壊れることによって外に出てきてしまうような形です。
 
バセドウ病と同じように甲状腺のホルモンが高くなってしまう病気になります。
 
もうひとつ中毒性甲状腺結節というのは、甲状腺のなかにいわゆる良性の腫瘍ができてしまって、その腫瘍が甲状腺のホルモンをつくっている病気になります。
 
なので、腫瘍を手術で取ったり、または放射線の治療で焼いてしまうことによって治すことができます。
 
どちらもバセドウ病によくあるTRAbという抗体が基本的には陰性で抗体をもっていない、という病気になりますので、TRAbという抗体の有無を採血でチェックすることによって、これらの病気との区別をつけることができます。

 

医科歯科ドットコム編集部コメント

バセドウ病の検査方法には血液検査、医師が直接触って診断する触診、超音波検査の3つがあり、それぞれどんな内容の検査なのか小菅 由果医師に教えていただきました。
 
また、TRAbという抗体の有無を血液検査でチェックする必要があるそうです。動悸や食べても太れないといった症状があるときは、念のために血液検査をしてもらうと安心ですね。
 
次回ではバセドウ病の治療法について詳しく伺います。

 
取材日:2019年10月17日
 

プロフィール

小菅 由果医師
元聖路加国際病院内分泌代謝科
元伊藤病院内科
日本内分泌学会 内分泌代謝科専門医
日本糖尿病学会 糖尿病専門医
日本甲状腺学会甲状腺専門医