健康診断の検診率の低さに警鐘!健康診断を受れば病気になることを防ぐ事ができる

小泉内閣で厚生労働省大臣として活躍された坂口力氏。実は現在の三重大学医学部出身の医師でもあるのです。その坂口先生が健康診断の検診率の低さに警鐘を鳴らしてらっしゃいます。そのあたりを含め予防医学についてお話を伺いました。
 

予防医学と血液検査について

病気を進行させない、と言う点から考えますと、予防医学的な立場で考え行動していれば、人間はもっと病気を回避する事ができます。そして、普段から健康診断を受けて居れば、より病気になることを防ぐ事ができると言えます。その事は理屈の上では解っているのですが、なかなかその様にならないのが現状です。
 特に日本は欧米と比べても検診率がひくいのです。なかなか3割に届かない。乳がん検診が一番高いのですが、それでも5割に届かないのが現状です。このような状況の中で、どうすれば検診率を上げる事ができるか、四苦八苦しているのです。
 では、なぜ検診を受けないのか・・・?
 検診を受けないと言う事にはいろいろの意味が込められています。まず一つは、検診に行くのが煩わしいという事があると思います。
「なんとなく煩わしいから暇なときに行くよ」とね。ただ、なかなか人間は暇な時はないわけで、そうするといつまでたっても検診を受けられないということになります。
 それから、もう一つは病院に行くことに対する敷居の高さと申しましょうか。病院に行って、「ここが悪い」「あそこが悪い」と言われることに対する恐怖感というものがあります。そのため、どうしても「受けたくない」という気持ちが働くことになります。
 こうした気持ちが交差して、検診率が低下していると考えられます。そして、血液検査についてですが、今まではもっぱら検診であれ、病気や病気の一歩手前で診て貰うものであれ、医療機関が行う検査ということになっていたわけです。「血液検査=医療機関」と思われていましたし、事実そうであってと思います。
民間企業がおやりになる血液検査のような、いわゆる病気とは直接かかわりのない、医療機関と距離を置いた形での検診を受けるケースは、今まで全くなかったと言っていいのではないかと思います。しかし、最近は家庭の中で採りました唾液や血液を利用し、検査結果を送付するということも行われるようになってきました。民間企業の中には、場所を提供して、そこに起こしいただいた方に、検査をしてそれぞれの方に(結果を)お返しする。測定されたもので、異常な測定値が見つかった時には、「このようなことが考えられます」といった内容を知らせてくれる親切な場所も出てまいりました。
 そのようなことで、ようやく、検診ということに対する幅(選択肢)が出てきました。今までのような病院一辺倒ではなく、人々が健康を守っていくために、必ずしも病院に行かなくても検査ができて自分の健康状態を知る一助にする道が生まれてきた。これは公衆衛生という立場からも予防医学の立場からも大きな前進だと思っています。

編集部まとめ

坂口先生は欧米に比べて受診率の低い日本の健康診断について危惧されつつも、病院だけでなく公衆衛生の観点から病院以外の民間企業での検診という選択肢にも未来を見いだせると仰ってくださいました。その点で日本の予防医学の未来を感じさせてくださいました。
 
取材日:2019年6月14日

プロフィール

元・厚生労働省大臣 医学博士
坂口 力 先生

三重県立大学(現在の三重大学)医学部卒業後、日本赤十字センターに勤務。
1972年12月 第33回衆議院議員総選挙に出馬し、初当選(通算11回)
2001年の省庁再編で統合された厚生労働省の初代大臣に就任。