がん免疫療法の今後の可能性について

小泉内閣で厚生労働省大臣として活躍された坂口力氏。実は現在の三重大学医学部出身の医師でもあるのです。その坂口先生はがんの免疫療法についても知見をお持ちの方。今回はがん免疫療法の近未来についてお話を伺ってきました。

免疫療法の今後の可能性について

最近、ガンの治療に対して免疫療法が進んできました。今までのガンに対する治療法は、手術、放射線療法、抗ガン剤が主体でありました。いずれにしても、その人の外側から影響を与える治療法で、今までの人間の体が経験のなかった治療法が行われてきました。ところが、ガン免疫療法は、人間の体の内側にある免疫という力を利用するものです。免疫とは、細菌やウイルスが体内に入ってくると、それを殺して病気にならないようにする力のことです。ただ、細菌やウイルスなどによって、細胞の遺伝子が傷つけられると、ガンになることがあります。免疫には、そのガンになった細胞を破壊することが可能です。これは、私たちの体に昔から備わっていた力です。これを利用して、これからも治療効果をあげていくという、免疫療法が盛んになってきました。今年の暮れか来年の初めには、おそらく日本でも認められると思いますが、光免疫療法という治療法があります。アメリカのNIH(米国国立衛生研究所)で研究をされている小林久隆先生の成果です。これが認められると、ガンの8割から9割に大きな効果があり、治すことができると言われています。これは画期的なことであり、ガン治療に対する革命が起こると私は思っています。これが免疫療法です。

 そして、ガンの治療だけでなく、免疫と関わる病気が沢山あります。例えば、昔から知られていますリウマチを初めとする自己免疫疾患は、免疫との関係を正すことによって病気の治ることが解ってきました。
 そうなってきますと、大げさに言えば、半分ぐらいの病気はこれによってかなり良くなったり、完治させる事ができるようになったり・・・ということが起こるのではないかと。免疫療法は外からの力ではない、内に秘められた能力を高めることによって、治すということですから、なぜもっと早く気付かなかったのか、と言うくらい画期的な治療方法になると私は思っています。

 ノーベル医学・生理学賞を受賞された本庶佑先生の例もあり、まだ日本には免疫療法について非常に多くの研究者が存在し、第二、第三のノーベル賞が出るのでは、と言われています。

編集部まとめ

日本人の2人に1人がかかると言われるがん。そのがん免疫療法に関しては近い将来日本でも認められる可能性があり、がん治療に大きな進歩を呼び込むのでは、と語ってくださいました。これから多くの患者さんに役立つことを期待したいです。
 
取材日:2019年6月14日

プロフィール

元・厚生労働省大臣 医学博士
坂口 力 先生

三重県立大学(現在の三重大学)医学部卒業後、日本赤十字センターに勤務。
1972年12月 第33回衆議院議員総選挙に出馬し、初当選(通算11回)
2001年の省庁再編で統合された厚生労働省の初代大臣に就任。