地域から胃ガン大腸ガンで亡くなる方をゼロに

罹患するがんの上位に来る胃がんや大腸がん。今回は東京大学大学院医学系研究科博士課程修了後に数多くの総合病院で消化器内科医として勤務し5,000件以上の内視鏡検査・治療に携わりその後 「ファミリークリニックひきふね」を開院した梅舟仰胤(うめふねぎょうたね)院長にその予防法について聞きました。

内視鏡検査とは何でしょうか?

内視鏡というのは、1cm前後の細長いチューブの先に、小型のカメラがついた機械を口からあるいは、鼻からはたまたお尻から入れることで、胃袋、大腸を直接見ることができる検査になります。

内視鏡検査がバリウム検査より優れた点は?

まず一番あげられるのが、内視鏡検査というの直接見れるのが、一番大きなメリットですね。バリウム検査というのは、どうしても、バリウムを流して出っぱっているところがあればバリウムをはじくし、溜まっているとこ凹んでいるところがあればバリウムがそこに溜まるし、それを影絵にして評価したものなので、間接的な検査になります。それに対して、内視鏡検査というのはカメラで直接見ていくので病気の診断率であるとか発見率というのは桁違いに優れています。

内視鏡検査によるデメリットについて

内視鏡検査によるデメリットとしてはですね、一つは苦痛を伴う場合があるということですよね。施設様であるとかあるいはその術者が検査をやる人によってある程度その苦痛があったりすることもあります。また柔らかい内臓に、硬いカメラというものが入ってきますので、出血したり、穿孔、穴が空いたりというような合併症も少ないながら起きるということは報告されています。

地域から胃がんや大腸がんで亡くなる方をゼロにする具体的な活動は?

実は胃がん、大腸がんは予防できるという風に僕らは考えています。そのために必要なことは定期的な胃カメラ、大腸カメラです。これに尽きると思います。胃がん、大腸がんどれもいきなり、ぱっとできるわけではないですね。ある程度芽が育って、それがだんだん大きくなる過程でがんになっていくということなので、定期的に内視鏡検査をやることで、そのがんになる手前の段階で見つけることが可能になります。
ぼくらとしてはまず定期な内視鏡検査を受けるという習慣を地域に根付かせるということを目標に活動しております。定期的な内視鏡検査を受けさせるためには検査が楽である必要があるわけです。苦痛がある検査というのは定期的に受けようとは誰も思わないわけで、僕らはそれに伴って、いかに検査を楽に患者様に提供できるかというのに日々尽力してしおります。

定期的な検診とはどれくらいの周期でしょうか?

それぞれの方がお持ちであるリスクによって変わってきますが、例えば、胃カメラの場合で申し上げますとピロリ菌がいる方、ピロリ菌を除菌した方などの比較的リスクが高い方に置かれましては1年に1回やるべきだと考えています。大腸に関して申し上げると、たとえば、大腸ポリープが過去にできたことがある方、できやすい方に関しては1年1回の大腸カメラをおすすめしています。
逆に言うとそういったリスクがない、何もない方ですよね、前回やって何もなかったという場合には2~3年に1回のフォローアップで十分なんじゃないのかなとそういう風に思います。

地域のかかりつけ医の役割と必要性の見解について

かかりつけ医というものはですね、欧米ではホームドクターと呼ばれておりまして、欧米ではまず何か具合が悪いときにはホームドクター、かかりつけ医を受診します。かかりつけ医の紹介状がないと受診できないようになっています。そうすることで、いたずらに、無駄に、いきなり専門医を受診して、実は違ったという医療の非効率さを防ぐという目的もあります。
日本ではまだかかりつけ医というのが浸透していないため、かかりつけ医というのを持っておくと何か困ったことがあった場合にかかりつけ医に相談しさえすれば、かかりつけ医の先生で対応できることであればそこで対応できますし、かかりつけ医の先生がその専門の病院に行った方がいいということであればダイレクトに効率よくその専門的な治療が受けられる病院に紹介してもらえるので、非常に効率よく医療が受けられるメリットがあります。

かかりつけ医はどのように探したらいいでしょうか?

かかりつけ医というのは病気だけを診るというわけではなく、その方のライフスタイルですよね、その方の全般を見るという役割を持っているので、単純に病気だけを診断するだけではなくて、人と人とのそのコミュニケーションが大事になってきます。
やはり、相性というのが一番大事になっていきます。例えば、風邪をひいたときですとか病院にかかる機会があったときにその先生との相性というのが、あっ!この先生とだったら、何か色々なことを相談してみたいなと肌で感じると思うので、ご自身で相性がいい先生をかかりつけ医に持っていくといいんですよね。

ポータルサイトで探すのはいかがでしょうか?

なかなかどこの病院に行ったらいいのかというのは正直もう無数にクリニックの数ありますから、迷うとこではありますが、一番おすすめというか効率的なのはやはりポータルサイトですよね。
いろんなクリニックの情報が載ったポータルサイトで探すというのは一つ、非常に有効な手段と取れます。ポータルサイトには各クリニックのエッセンスとなる情報が盛り込まれていますしその実際にクリニックを受診された利用者様の声なんかも載っていることも多いので非常に参考になるかと思います。

先生ご自身ががん早期発見のためにしていることは?

やはり長生きするためには、基本的にいま何で死ぬかって言うと、がんで死ぬか、あるいは生活習慣病で死ぬか、あるいは老衰かっていうことですよね。生活習慣病に関しては自分の努力で何とかなることが多いわけですよね、糖尿にしろ、血圧にしろ、尿酸にしろ、コレストロールにしろ、ある程度自分の努力で何とかなる。
がんに関しては、正直自分の努力では何とかならない部分が圧倒的に多いので、こちらに関しては定期的な検査を受けることのみでしか、早期発見というのは難しいという風に考えています。どういった検査を受けたらいいのかということになってきますが、基本的になる可能性が高いがんから作戦を練っていくというのが一番効率がいいかと思います。

2018年度の国のデータを拝見しますと、一番多いのは大腸がん、年間15万人くらいの方が実際に大腸がんになられます。次に多いのが胃がんですよね、これは年間12万人くらいの方がなられるといわれています。この胃がん、大腸がんだけでかなりの数の方がなられるこれは間違いない事実としてあるので、胃がん、大腸がんの対策を練るというのが一番効率がいいという風に考えています。

そのためには、先ほど申し上げましたけれども、定期的な胃カメラ、大腸カメラですよね。何か症状があってからアクションを起こすのでは、往々にして手遅れになってしまうことが圧倒的に多いので、何も症状がなくても定期的に胃カメラ、大腸カメラを受けることで胃がん、大腸がんで命を落とすというのはほぼほぼ、まず可能性としてはぐっと低くなりますので、私自身も定期的な胃カメラ、大腸カメラというのは必ず受けております。

先生ご自身がまず相談に行く医師は?

僕自身が東京大学の消化器内科の医局出身ですけれども、大学病院で勤務していたときにいろんな先生方とのネットワークっていうのをおかげさまで得ることができてきまして、一番その信頼できる先生方が多いのが事実ですね。あとは気心の知れた先生も多いので、私自身が病気になったときに誰に相談するかというとやっぱりその東大の医局に在籍している仲間たちであるとか先輩方ですね。そういった方に相談することが多いと思いますね。

企業で行っている健康診断でがんの早期発見は難しい?

賛否両論あるとは思いますけど、例えば、わかりやすい話をするとですね、具体例を挙げて説明させていただきますと、便潜血の検査ってありますよね。大腸がん検診なんかでも40歳を過ぎると付いてくるものがあると思いますけど、早期の大腸がんで便潜血の検査で引っかかる割合は4割と言われています。6割の早期の大腸がんの方は便潜血の検査では大丈夫だといわれてしまう、ということがあります。

あとはバリウムの検査というものがあります。胃のバリウムの検査。実際その胃のバリウムの検査で早期がんを見つける、あるいは食道がんもそうですけど、早期の食道がん、早期の胃がんを見つけるというのはかなりの至難の業と言われています。実際バリウムの検査であるとか検便の検査だけで胃がん、大腸がん、食道がんなどこういったものを早期で見つけるというのは正直な話かなり難しいといわざるをえないと思います。

経済的に余裕がある方とない方でやれることで、やるべきことは?

まず、比較的余裕のある方におかれましてはやはり、その胃カメラ、大腸カメラでもって直接、胃や大腸を見に行くというのをぜひともおすすめしたいです。やはり直接見にいきますので、早期発見の率であるとかですね、病気の診断率、発見率というのは格段に上がりますので、ぜひとも定期的な胃カメラ・大腸カメラっていうのは積極的に選択肢に入れていただきたいですね。

あとは、例えばですけどCT検査ですね。例えば、すい臓がんであるとかですね、早期発見が比較的難しいといわれているがんにおきましては、お腹のエコーの検査だとどうしてもすい臓というのは全部見切れないということがあります。本気ですい臓がんや胆道がんですとか、いわゆる発見が難しいとされている胆膵系のがんを見つけにいくのであれば1年に1回のCT検査を強くおすすめします。

これは肺がんでもいえることで単純の胸部のレントゲン検査というのはもちろん、ある程度の肺がんは発見できますけど非常に小っちゃい早期の肺がんに関しては発見できないことが多いので、肺がんに関してもやはり1年に1回、もし余力があるのであればCT検査を受けることを強くおすすめします。

逆に経済的に余力があまりない方におかれましては、例えば胃カメラの代わりになるものとしては、ピロリ菌のチェックです。今オプションで2,000~3,000円払うことで、ピロリ菌のチェックというのは血液検査でできますので、ピロリ菌の有無というのは胃がんのリスクと大きくかかっているということがありますので、ピロリ菌の有無をチェックするだけで果たして胃カメラをやるべきなのか、やらないべきなのか、そういったリスクのふるいわけもできますので、お金に比較的余裕のないということであれば、その血液検査でピロリ菌の有無をチェックすることを行ってもいいと思いますね。

胃がんと大腸がんは食生活で予防は可能でしょうか?

一般的にどういった方が大腸がんになりやすいかをビックデータを用いて解析すると、よく言われているのが野菜を食べない人、赤身のお肉を良く食べる人、肥満気味の人、あとお酒タバコをやる人、運動をあまりしない人、こういったことが一応引っかかってはくるといわれています。ただまあどれも絶対的なものはなくて、野菜をいっぱい食べている人も大腸がんになったりもするので、これさえやっていればや絶対的なものはないとはされています。

ただ今申し上げたものって言うのは心がけないよりは、心がけた方が当然リスクは減るといわれているので、野菜を中心にした規則正しい食生活、あとは適度な運動ですよね。そういったものを心がけていただくに越したことはないと思います。ただやっぱりそれにも増して、定期的な検査。それがやはり一番重要であるというのは否めないといえます。

大腸をきれいにたもつには?

大腸をきれいにたもつというのはすなわち、腸内環境を良くするという風に置き換えられます。どうしてもダイエット、特に過激なダイエットをやると食生活のバランスが崩れて、腸内環境が極度に悪化して、便通が悪くなるというのはよく経験されることなので、やはり腸内環境を維持するというのを意識したダイエットをおこなっていただきたいです。
具体的にはやはりその発酵食品です。納豆であるとか、ヨーグルトであるとか、キムチであるとか、そういった発酵食品を積極的に摂って頂きたいですし、あとは食物繊維が多いもの、お野菜を中心に、海藻であるとか、ごぼうであるとかそういった食物繊維が多いものを積極的に摂っていただきたいところです。

編集部まとめ

日本人の食生活の西洋化で増えていると言われる胃がんや大腸がん。梅舟仰胤院長は「定期的な内視鏡検査で多くの胃がんや大腸がんは予防できる」とおっしゃる姿が印象的でした。どうしても検診から足が遠のきがちな私達の背中を押してくれるインタビューにあらためて教わる点が多かったと感じました。

取材日:2019年6月20日

プロフィール

日本消化器病学会認定 消化器病専門医
日本消化器内視鏡学会認定 消化器内視鏡専門医
ファミリークリニックひきふね 院長
梅舟 仰胤 医師2007年3月 千葉大学医学部卒業
2017年3月 東京大学大学院医学系研究科 博士課程修了
2007年4月 JR東京総合病院 初期研修・後期研修 消化器内科
2011年4月 東京警察病院 消化器科
2012年4月 東京大学医学附属病院 消化器内科
2014年4月 日本赤十字社医療センター 消化器内科
2015年4月 東京大学医学附属病院 消化器内科
2017年5月 ファミリークリニックひきふね 開設