在宅医療、訪問診療の現状の処置や都市部と地方における今後の課題とは?

少子高齢化に伴い世の中のニーズがますます高まる在宅医療。その状況は都市部と地方とでは状況も異なるようです。
今回はひなた在宅クリニック山王の清山 知憲 医師にお話を伺い在宅医療、訪問診療の現状の処置や都市部と地方における今後の課題についてお話を伺いました。

どのような患者さんが対象になりますでしょうか?

基本的にルールが1つあって、患者さんが自分の力で診療所または病院に通院することが出来ないことが大前提になりますが、さらに2つにわけると癌であったり、心不全の重い状況であったり、非常に重篤な患者さんで、もう最後おうちもしくは施設で最期まで過ごしたいという患者さんであったり、もしくは認知症のためなかなか自分で通院できないとか、そうした慢性的な問題をかかえた患者さんの2通りに分かれます。

自宅でどのような処置をしますか?

基本的には、在宅で出来ない処置というものはないですけれども、出来ないことをあえてあげるとCT・MRI・レントゲンなど画像検査は出来ないです。それ以外の点滴であったり、腹水、お水をお腹から抜いたりとか、もしくは胃ろう管理であったり、排尿をだすといった膀胱(ぼうこう)留置カテーテルの管理、もしくは在宅の緩和ケアです。
医療用麻薬を使って、痛みを取り除くようなそうした治療もシリンジポンプといって機械を使って医療用麻薬の液を少しずつ流しながらしっかり痛みを取り除いていくようなそうした治療もしますし、また検査でいうと血液検査やエコー検査、エコーもスマホサイズのポータブルエコーがございますからそうしたエコーを使った検査、また心電図も撮ることが出来ます。そうした処置がかなり今、技術また検査機器の発達によって可能です。

お薬もだしてもらえますか?

患者さんやご家族の希望によって、お薬を持ってきてもらってそして飲み方やお薬のセットまでやってもらいたい方の場合、そうした在宅を対応している薬局を紹介して、そちらにわれわれ処方箋をやりとりしながらお薬を持ってきてもらうこともあります。
またご家族がお薬をちゃんと取りにいきたいですとおっしゃれば、われわれは処方箋をそちらに置いてお薬を取りにいってもらいますし、どんな形でも対応は可能です。

現在の在宅医療の課題は?

東京みたいな都市部と地方でもまったく違いますが、地方における在宅医療の問題は、まず在宅医療をやってくれる医師そのものがいないという地域のほうが、いま日本全国では多いのかもしれません。
一方で都市部だと在宅をやる医師はたくさん増えてきていますね。そういう意味では量的な部分で課題は、段々解決させつつあるかもしれませんが、今度はどんな在宅医を希望されるか、患者さんやご家族の価値観によってやはり在宅医の先生と合う・合わないがございます。もちろん在宅クリニックによって対応できる処置やご病気もちょっと違ってくるので
今度は在宅医療をやるだけではなくて、在宅医療のクリニックでもどんな専門なのか輸血はしてくれるのかしてくれないのか、先生と合う・合わないとか、そうしたある意味質や専門性という意味ではまだまだ外来や病院ほど揃っているわけではないのでそうしたところも都市部では課題として認識されているのではないでしょうか。

課題の中で地域における連携についてのポイントは?

連携というとなかなか一般の方にはわかりにくいかと思いますが、在宅医療は1人の患者さんを診にいくのに色々と離れた事業所の訪問看護ステーション・ケアマネージャーさん、そして在宅医の我々が、それぞれの拠点から行って帰ってきて、その患者のことを色々と考えるわけですけども、やっぱりお互いがやりとりし、患者さんの情報を共有したりしなければいけない中で、ケアマネージャーさんや訪問看護士さんが、ちょっと先生に話しにくいなとか相談しにくいなとかいつも電話しても忙しいって言った後でかけ直すとか、そうしたどっちかというと医師・クリニックが作ってしまうような壁が多いような気がしていて、そこをすごくハードルを下げることで訪問看護ステーション・ケアマネージャーさんもしくは病院連携ソーシャルワーカととてもうまくやっているクリニックあります。
そして連携がうまくいってこそ患者さんのケアの質の向上につながるので、われわれよく言われますが医師・院長や在宅のクリニック先生のざっくり言うと「話しやすさ」。何でもこの先生なら相談できそうだなっていうそうした部分が実は重要じゃないかなと思っています。

看取りについて先生お考えを教えてください。

実は東京みたいな都市部と地方では結構違っています。まず東京だと確実に今後2040年の死亡者数のピークに向けてどんどん高齢者や看取り数が増えていきます。それに対して病院のベット数はおろか施設の数すら足りなくなってくるのでどうしてもやっぱり家で看ていかなければいけない、家で看取らなきゃいけない患者さんが増えます。
またすごく今動きとしてやっぱり家に帰りたいよね、家で最期の旅立ちまで過ごしたいよねという方々も増えているのでそうした家での看取りをしっかり最後まで責任を持ってやってくれる先生たちっていうのがもっと東京でもこれから数的にも必要になってくると思っています。
またいっぽうで地方だと実は施設が結構あって、施設での看取りっていうのが重要な課題になってきます。施設での看取り+自宅での看取り、そうしたときに施設の職員さんとのやりとり、施設の職員さんにある程度決め細やかに指導や教育をしながらしっかり施設での看取りを支えることができる在宅クリニックそうしたものがもっと地方でも必要になってくると思っています。
われわれの医療法人では、宮崎の在宅クリニックと東京の大田区の大森で開業しています。ひなた在宅クリニック山王の2つでやっているので本当にどっちの地域性も良く見えてそして住民の皆さんの価値観やまた連携をとる事業者さんの求めるものがまた全然違うのでそれぞれ非常に勉強になりますし、それぞれのいいところを生かしていきたいと思っています。また、患者さんや一般の皆さんの目線からすると、在宅医療って一旦選ぶと先生が定期的に来るのでこちらから外来のように選んで行って、そしてちょっとやだなとか例えばこの先生苦手だなと思ったら他のクリニックに足を運ぼうかなという風なそうした流動性が在宅ではなくてなかなか在宅の先生を変えにくい、言いにくい、そうしたちょっと難しさもあるかなと思います。
そこは自宅・施設での主治医を考えるにあたってご家族やケアマネージャーさんも情報を収集してどんな先生にかかりたいかというのを今後自分たちの身を守り、また最後まで満足のいく人生を送るためにも必要になると思っています。

先生が病気になったら相談に行く先生は?

そんなに難しいことは考えなくて宮崎の当院のすぐ近くにある「あなみ内科医院」が私のかかりつけですのでその先生すごく話やすいですし、一通りのことは相談に乗って対応していただけるので、時々私もちょっと喘息が出たりそうしたときも対応していただけますからそこに相談しますね。

編集部まとめ

清山 知憲先生にお話を伺ってわかったのは、2040年の死亡者数ピークの多死社会を迎えるにあたって都市部と地方で状況が違うということ。特に都市部では施設不足に伴い在宅の看取りの増加が予測されるとのこと。家族の身になる者にとっては訪問診療の医師やケアマネージャーさんとの濃密なコミュニケーションや連携の大切さを痛感させられました。

取材日:2019年7月1日

プロフィール

総合内科専門医
ひなた在宅クリニック山王 理事長
清山 知憲 医師
2006年 東京大学医学部卒業
2008年 沖縄県立中部病院卒業
2009年 米国ベスイスラエルメディカルセンター インターンシップ修了
2013年 宮崎県議会議員
2017年 宮崎県議会議員辞職
2018年 きよやまクリニック開院
2018年 総合内科専門医